SSブログ

休暇 [か行]

死刑囚を収監している刑務所で働く刑務官の物語です。
主人公の姿を通して感じられた死刑の重さと辛さに胸が痛くなりました。

これまで独身で通してきた刑務官の平井(小林薫)は、姉の薦めでお見合いをした。
相手の美香(大塚寧々)はバツイチで一人息子もいるが、美しくてしっかりした女性だ。
彼女は派遣で働きながら一人息子を育てていたが、これから成長していく息子に
良き父親になってくれる人をと見合いをしたのだ。
彼女は平井の誠実さと公務員という職業に安定を感じ、結局二人は縁を結ぶことになった。
だが、平井は半年前に事情で有給休暇を取ってしまったので、今は休暇が取れない。
結婚式を挙げても、新婚旅行が先になってしまうのを心苦しく思っていた…

死刑の重さと、それを仕事として受け止めなくてはならない刑務官たちの心境に
心がどーんと重くなりました。

平井の勤める刑務官という職業は、家族と言えどもその内容を口外することは出来ない
ある意味孤独な職業です。
受刑者とも親しくなることはないし、分かり合えるのは同じ職場の人たちだけです。
そして、職場で経験を積むほど、その辛さもあって口数が少なくなっていきます。

平井は見合いによって、美しい妻と幼い息子という家族を持つことになります。
感情表現の不器用な彼は、一生懸命に妻になる女性と息子を喜ばせようと考えます。
そして、たまたま結婚式の直前に、ある死刑囚の死刑が執行されることになります。
この刑務所では制度として、死刑に立ち会うと1日、そして精神的に苦痛を伴う一番大変な任務に就くと
1週間の休暇が貰えることになっています。
結婚式という晴れの舞台に立つ平井のために、同僚は彼を今回の任務からは外そうとしますが、
逆に彼は休暇のために、一番辛い任務に立候補してしまいます。
この作品の中では、死刑執行までの手順が詳しく描かれていました。
そこには刑務官として死刑に立ち会わなくてはならない非情なまでの辛さが映し出されていました。

死刑についての知識と言えば、日本では絞首刑になるということくらいでした。
初めて知って驚いたのは、今回の主人公のような任務があるということと、
死刑になる人はその直前まで知らされないということです。
アメリカの映画では前日に好みの食事をリクエストするシーンとかがあって
死刑囚は心の準備をして当日を待つと思っていました。
でも、日本の制度では刑務官たちは2日前に、そして当人は独房から連れ出される時に初めて知るのです。
死刑囚役の西島秀俊さんが見せた恐怖の表情が、その心境の全てを伝えてくれました。

それにしても家族のためとは言え、一生のトラウマになるほどの辛い任務を
自ら選ぶってどうなのだろうかと考えました。
この休暇によって得られた家族の笑顔に満足するのか、それともこんな苦労を背負ってしまったと思うのか。

よく昔は、家族のために歯を食いしばって頑張るお父さんというが、働くサラリーマン像になっていた気がします。
今回の主人公はそこまでの覚悟を考えてというよりは、流れで決めてしまったと言う感じで
本当に彼は幸せになれるのかなと、ちょっと心配になってしまいました。
でも、家族の絆を感じさせるシーンが描かれていくうちに、
やっぱり彼と彼の家族は幸せになっていくのだろうなと感じられてきました(^^ゞ

もの凄く重かったのですけど、でも観て良かったと思った1本です。

hitsuji_kyuka.jpg

監督:門井肇 出演:小林薫 西島秀俊 大杉漣 柏原収史 菅田俊 大塚寧々
2007年 日本
(080714)

nice!(4)  コメント(9)  トラックバック(3) 
共通テーマ:映画

nice! 4

コメント 9

non_0101

xml_xslさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2008-07-26 14:41) 

バラサ☆バラサ

スバル座だったんで、見ようか見まいか悩んでいたんですよね。
機会があったら見てみます。三軒茶屋中央あたりで上映されるかもしれないし。

死刑と言えば、漫画の名作「人間交差点」のひとつのエピソードで書かれていました。
by バラサ☆バラサ (2008-07-26 16:26) 

non_0101

バラサ☆バラサさんへ
こんばんは。nice&コメントをありがとうございました!
スバル座までチャレンジして来ました(^^ゞ
重いですけど、いろいろ考えさせられました。
もし機会がありましたらお勧めです☆
by non_0101 (2008-07-26 23:36) 

ken

「死刑制度は人間性を崩壊させる」
そんなことを訴えた映画だったと思います。
なくなってもいいんじゃないでしょうか?この罰は。
by ken (2008-07-27 11:38) 

たいちさん

思い内容の映画ですね。裁判員制度がはじまるので、観ておく必要ありそうですね。(死刑制度を含めて)
by たいちさん (2008-07-28 10:56) 

non_0101

kenさんへ
こんにちは。nice&コメント&TBをありがとうございました!
当人だけでなく、周りで働く刑務官の人たちにも
これほどの負担をかけるということを改めて認識しました。
考えさせられました(-_-)
by non_0101 (2008-07-28 12:50) 

non_0101

たいちさんへ
こんにちは。nice&コメントをありがとうございました!
知っているようで分かっていなかったと改めて思いました。
いろいろ考えさせられる作品です。
by non_0101 (2008-07-28 12:53) 

snorita

執行のその日まで本人には知らされない、ということは、毎日「いつくるか」を考える、ということですよね。このことを書いた本をいくつか読みましたが、「知らされない」ことが、彼らにとって大変な苦痛になる、とありました。この映画も観てみたいです。
by snorita (2008-07-28 13:29) 

non_0101

snoritaさんへ
こんばんは。本当にいろいろ考えさせられる作品でした。
いつか分からないということは本当に苦痛になると思います。
また、受刑者たちを見守る任務に就いている刑務官の人たちにも
やはり苦痛になると感じました。
いくらその仕事に就いているとは言え、辛すぎる業務です。
よくぞ頑張って働いているなあとしみじみ思ってしまいました。
by non_0101 (2008-07-29 00:10) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 3

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。