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クリスマス・ストーリー ~フランス映画祭2010より~ [か行]

アルノー・デプレシャン監督がカトリーヌ・ドヌーヴをはじめとする豪華俳優陣でおくるクリスマスの物語です。
どんな家族の物語が描かれるのだろうと気になってチャレンジしてみました。
フランス映画らしいドロドロな展開にひやーっと思いつつも、人間の複雑さをしみじみと感じる作品でした。

クリスマスを間近に控えたある冬の日。
家事をしていたジュノン(カトリーヌ・ドヌーヴ)はめまいを起こして倒れてしまった。
病院で検査したところ急性の白血病と診断され、骨髄移植をしなければ余命数年と言われてしまう。
実はジュノンの長男も同じ病気で亡くしており、その時には適合するドナーが見つからなかった。
ジュノンには亡くなった長男のほかに長女エリザベス(アンヌ・コンシニ)、次男アンリ(マチュー・アマルリック)、
三男イヴァン(メルヴィル・プポー)がいたため、彼らや彼らの子供たちに骨髄検査を受けさせようとする。
だが、次男アンリは長女エリザベスに激しく嫌われていて、
6年前にエリザベスが彼の借金を肩代わりする代わりにヴュイヤール家と縁を切らされていた…

クリスマスに集うある家族の物語です。
こんな家族の情景は怖すぎます~と感じました(^_^;)

まずこの一家があるのはパリではなくて、北のほうにある工業都市です。
監督さん曰く、人が転勤させられたら嫌だと思う代名詞になるような未来を感じられない街だそうです。
そんな街で染物工場を営んでいる父と専業主婦の母、独立している姉弟たちと
それぞれのパートナーや子供たち、そして工場を手伝っている甥がクリスマスに集まります。

父アベル(ジャン=ポール・ルシヨン)は子供たちを優しく愛する人です。
でも、働いてばっかりでいつも自室で仕事の計算をしています。
仕事をしていない時はやっぱり自室でレコードを聞きながら楽譜の音符を追っています。
ちょっと不思議です。

母ジュノンは何故か次男アンリを嫌っています。
アンリが母に原因を尋ねるシーンがあるのですけど、ユダヤ人みたいだからとか不思議な答えを返します。
要は生理的に嫌いなようです。
そのサバサバした言い方には、もう決定なのと言われているようで、ある意味面白かったです。
嫌いと言っても別に拒否するとかではなく、一緒に外出したり話したりもします。
でも、子供にとっては迷惑千万な母親です。

長女エリザベスは弟アンリを激しく嫌ってます。その嫌い方は半端無いです。
自分の目の前に存在するのも嫌でどこかへ消えて欲しいと願ってます。
6年前に彼女は弟の借金を肩代わりする条件として、家族からアンリを追放させます。
彼女が嫌う原因はアンリが昔書いた手紙のようですけど、アンリ自身は記憶に無くその内容は不明です。
またエリザベスの一人息子ポールは多感な10代で、精神的に不安定なところがあり
精神病院に入院暦もあります。
彼女はポールを愛しつつも、彼の存在を持て余しているように見えます。

次男アンリは怠惰でいい加減な人間にみえます。
彼は事業に失敗し、妻と子供には出て行かれて、今ではアルコールが手放せなくなってます。
彼は6年前に借金で訴えられた時は、裁判の審議中に
父の工場を売って借金を返してくれなどの無責任な発言をします。
また、今の自分の状況を母親に嫌われた子供の成れの果てと言い、自分は被害者だと思ってます。
姉エリザベスからみると、そんな彼の発言は全て許されるものではありません。
でも、一方で画一的な善悪に囚われずに、いつも笑顔で楽しげなジョークをとばす彼は
エリザベスの息子ポールやユダヤ人の恋人フォーニア(エマニュエル・デュヴォス)に慕われます。
やっぱり不思議な存在です。

三男イヴァン(メルヴィル・プポー)はハンサムで、妻シルヴィア(キアラ・マストロヤンニ)と
二人の息子を愛する優しい夫です。
でも、以前はとても内気で精神的に不安定なところがありました。
そんな彼はポールをとても心配し、自分も子供の頃は同じようだったから大丈夫だと励まします。
実際のところ彼は妻シルヴィアとの出会いで文字通り人生を救われたようでした。

そして、彼らの従兄弟シモンは独身で、いつも彼らの集まりには参加しています。
以前は明るかった性格の彼は、いつの間にか暗くて沈んだ様子を見せるようになりました。
そんな彼が何故独身なのか、ヴュイヤール家の集まりに来るのは何故なのかが分かった時、
彼の抱えていた苦しい心のうちが明らかになってきます。
そして彼の想いは、また一つの波紋を起こしていきました。

それにしても豪華なキャストですね~
それほどフランス映画を見ていない私でも主要キャストはみんな観たことがある俳優さんばかりでした。
とんなキャストたちが創り上げていく家族は、もう愛憎入り混じってぐちゃぐちゃです。
その中でもカトリーヌ・ドヌーヴの存在感は圧巻で、彼女の演じるジュノンを中心に回っている家族の
人間模様がなるべくして今のようになったのだなあと納得しながら観ていました。

ちょっと難しかったけど見応えのある作品でした。
観終った時、これから先この家族はどうなっていくのかなあと心配になるのと同時に
人間の怖さと複雑さ、そしてそれでも集まろうとする家族の絆をじわっと感じた1本です。

hitsuji_CHRISYMAS-TALE.jpg

監督:アルノー・デプレシャン 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ ジャン=ポール・ルシヨン マチュー・アマルリック アンヌ・コンシニ メルヴィル・プポー エマニュエル・デュヴォス キアラ・マストロヤンニ
2008年 フランス 原題:UN CONTE DE NOËL/ A CHRISYMAS TALE
(20100320)

追伸
この映画はフランス映画祭2010で観ました。公開は2010年秋の予定です。

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コメント 19

non_0101

釣られクマさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2010-03-22 12:58) 

おぉ!次郎

 カトリーヌ・ドヌーヴ、キアラ・マストロヤンニというキャスティングに興味深々です。ミーハーなおぉ!次郎です。

by おぉ!次郎 (2010-03-22 17:07) 

たいちさん

複雑な家族関係の重たいストーリーですね。いつも思うのですが、フランス映画は全般に暗さがあり、それを何か味付けして見せているように思います。今回は豪華な俳優陣が味付けかも知れませんね。
by たいちさん (2010-03-22 21:41) 

まっきー

連休はenjoyされましたか??
by まっきー (2010-03-22 23:37) 

なぎ猫

なんだかとても”変な”人たちの集まった家族のようですね。カトリーヌ・ドヌーブは美人女優といわれることも多い人ですが、意外と人癖ある役柄を演じることが多く、個人的に面白い人だ、と思っています。
by なぎ猫 (2010-03-23 11:06) 

non_0101

トメサンさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2010-03-23 12:44) 

non_0101

おぉ!次郎さんへ
こんにちは。nice&コメントをありがとうございました!
カトリーヌ・ドヌーヴの美しさは健在ですね~
あの年齢を感じさせない美しさと存在感には圧倒されます。
機会がありましたら、ぜひチャレンジして
彼女の美しさを堪能してみてくださいね(^^ゞ
by non_0101 (2010-03-23 12:46) 

non_0101

月夜さんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2010-03-23 12:46) 

non_0101

aya_ruiさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2010-03-23 12:46) 

non_0101

たいちさんへ
こんにちは。nice&コメントをありがとうございました!
本当にフランス映画で描かれる家族は複雑で重いものが多いですね~
お国柄なのでしょうか(^^ゞ
今作も心情的には分かりにくいところも多かったのですけど、興味深かったです。
何といっても俳優陣の素晴らしさは最高でした☆
by non_0101 (2010-03-23 12:48) 

non_0101

まっきーさんへ
こんにちは。nice&コメントをありがとうございました!
連休は…結局、映画ばかり観てました(^_^.)
普段は出会えないような映画が多かったので面白かったです。
でも、ちょっぴり疲れました(^^ゞ
by non_0101 (2010-03-23 12:50) 

non_0101

@ミックさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2010-03-23 12:50) 

non_0101

なぎ猫さんへ
こんにちは。nice&コメントをありがとうございました!
かなり不思議な人たちが集まっていました(笑)
この親にしてこの子ありなのでしょうか。
一見、普通に見えて、心の奥底は何を考えているか分からないような…
一番不思議なのはやっぱりカトリーヌ・ドヌーブでした☆
by non_0101 (2010-03-23 12:53) 

non_0101

もももさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2010-03-23 12:53) 

おぉ!次郎

 カトリーヌ・ドヌーヴやはり美しいですか…。
 もうほとんど憶えていませんが、カトリーヌ・ドヌーヴ出演作で確かみたことがあるのは『インドシナ』、『ハンガー』、『うず潮』、『シェルブールの雨傘』くらいです。『シェルブールの雨傘』が一番印象に残っています。
by おぉ!次郎 (2010-03-23 20:20) 

non_0101

おぉ!次郎さんへ
こんばんは。やっぱり美しかったです(^^)
私が観ているのは何年か前にリバイバルで上映されていた『ロバと王女』と
ちょっと出演していた『ダンサー・イン・ザ・ダーク』だけです。
『シェルブールの雨傘』は名作ですよね~
いつかちゃんと観てみたいです☆
by non_0101 (2010-03-24 00:09) 

non_0101

artfuldodgerさんへ
こんにちは。niceをありがとうございました!
by non_0101 (2010-03-27 16:25) 

coco030705

こんにちは。
カトリーヌ・ドヌーヴの存在感はすごいですね。今なお美しい人です。

映画の舞台のルーべという街は監督の出身地かなにからしいですよ。
確かにほんの短い場面ですが、ガランとして落書きがいっぱいの下町が
映っていましたよね。

私はこのストーリーがおもしろいと思いました。しかも俳優達が大事にされていて、一人ひとりキャラクターがきちんと描けていたのがすばらしかったです。家族とか人間関係というのは、はっきり解決できないところもあるし、嫌な人間でもつきあっていかなきゃならないところもあるし、そういう複雑さをほんとにうまく描いていたと思います。
TBさせていただきますね。
by coco030705 (2010-12-22 13:06) 

non_0101

cocoさんへ
こんばんは。nice&コメント&TBをありがとうございました!
複雑な人間関係でしたね^_^;
親兄弟なのに、こんなに愛憎入り混じった関係になってしまうのかと
ちょっとビックリしながら観ていました。
カトリーヌ・ドヌーヴは本当にいつまでも美しい女優さんですね~
もうすぐ公開の「しあわせの雨傘」も楽しみです☆
by non_0101 (2010-12-23 00:31) 

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