私の日々の楽しみのひとつ、通勤電車の中で読んだ文庫本の中で面白かった本の感想です。
今回の本は『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』です。
『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』 万城目学/著 角川文庫先日、万城目学さんの『パーマネント神喜劇』でちょっとほっこりしたので、
この本を読んでみたくなりました。
『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』は2010年にちくまプリマー新書で発売された小説です。
その後、角川文庫で再登場した時にはじめて読みました。
かのこちゃんが小学校に入った春から夏休みが終わった秋までの、半年ほどの物語です。
かのこちゃんの家にはマドレーヌという猫と玄三郎という犬がいます。
アカトラの淡い茶味がかったマドレーヌは、猫たちの間では“マドレーヌ夫人”と呼ばれています。
通常、猫は犬の言葉は解りませんけど、マドレーヌ夫人と柴犬の老犬・玄三郎は言葉が通じ合える
異色の夫婦なのです。
昨年9月、ゲリラ豪雨の日のこと。猫のマドレーヌ夫人は玄三郎の犬小屋で雨宿りをしました。
玄三郎は雨に打たれながらもマドレーヌ夫人に犬小屋を譲ってくれたのです。
マドレーヌ夫人は町から町へと旅する猫でしたけど、
この日から、かのこちゃんの家の玄三郎と一緒に暮らすようになりました。
物語は小学校へ通うようになったかのこちゃんの日常と、
マドレーヌ夫人の日常がクロスしながら描かれていきます。
“刎頸の友”が出来たかのこちゃんと、
地域の猫たちに迎え入れられながら玄三郎に寄り添う日々を送るマドレーヌ夫人。
二人の日々は普通だけど生き生きとしていて、読んでいて楽しかったです。
かのこちゃんがこれからどんな人生を送るのか、マドレーヌ夫人がどんな暮らしを送っていくのか、
読み終わった後にずっと想像していたくなるような物語です。
余韻も含めて、静かな日にもう一度読み直したくなった1冊です。
(20200515)