私の日々の楽しみのひとつ、通勤電車の中で読んだ文庫本の中で面白かった本の感想です。
今回は『完パケ!』です。
『
完パケ!』 額賀澪/著 講談社文庫
映画の世界を目指して卒業制作に大きな夢を掛ける学生たちの物語です。
目次は
一、 ムサエイの意地ってやつを
二、 あの監督の現場に入るのは怖い
三、 僕は映画の世界になんて行けない
舞台は武蔵映像大学(ムサエイ)という映像学部のみの単科大学です。
理論系以外のコースでは、学生たちはひたすら映画や映像について学んでいきます。
主人公は監督コースで学ぶことを選んだ北川くんと安原くん。もちろん夢は映画監督です。
能力も人望もあって、とても出来る奴の北川くん。
不器用だけど映画を監督することに全人生をかけて挑んでいく安原くん。
そんな二人は卒業制作へ向けてのコンペに参加します。
そして、自分の夢を目指して参加したコンペの結果、卒業制作の監督に選ばれたのは安原くんでした。
二人は大きな葛藤を抱えたまま卒業制作に挑み始めます。
自信を持って準備万端で挑んだコンペで選ばれず、プロデューサーを担うことになった北川くん。
自信があっただけにがっかり感は半端なく、プロデューサーとしての業務はこなしても
監督と映画にしっかりと向き合って創り上げようという気持ちが生まれません。
一方、安原くんは女手一つで自分を育ててくれた母を故郷へ残し、卒業制作の現場に張り付いています。
しかも、その母は病気で余命いくばくも無い状況です。
それでも、プライベートな事情は胸にしまいながら、自分の思う映画をとことん目指していきます。
でも、いかんせん自分の考えや想いを言葉にして相手に伝えるのが究極に下手な安原くん。
役者の気持ちを考える余裕も無い監督の現場は厳しい状況になっていきます。
「あの監督の現場に入るのは怖い」と役者に思わせるほど…
それでも、彼らは未来の監督を目指して最後までやり遂げます。
彼らの充実感に、読んでいる方も胸がいっぱいになりました。
映画はこんな人たちの熱い想いがあるからこそ存在していくのだろうなとしみじみと思った1冊です。
(20210325)