『空よりも遠く、のびやかに』 川端裕人/著 集英社文庫高校入学と同時に地学部へ入った主人公が仲間たちと様々な体験をしていく青春物語です。
最近、読んでいた川端裕人さんの最新作が文庫本で発売になったのでチャレンジしてみました。
高校に入学した坂上瞬は“日々、平熱(ノーマルモード)”をモットーに生きようと思っています。
中学時代は一年間だけ野球部で活躍していましたけど、事情により運動から遠ざかることになりました。
彼の想い描く高校生活は文化系の部で幽霊部員になりつつ、限りなく帰宅部がいいなという感じです。
そんな時、彼が出会ったのが地学部でした。
きっかけは同じクラスの女の子・岩月花音。
花音が期待のホープとして地学部へ入部しようとしているところに、たまたま瞬は居合わせます。
その時まですっかり忘れていましたが、彼女は同じ中学の出身でやはり1年生の時に同級生でした。
地学部の上級生としっかりとした口調で話す彼女の輝きに瞬が魅了されたのです。
彼の入った地学部は予想以上に“知”への情熱の熱い生徒が揃っていました。
人数は少ないけれど、誰もが自分の求めるものを追求しています。
地球科学の略である地学は範囲が幅広く、この部でも地質班、気象班、天文班の3つの班がありますけど、
その分野に留まらず重なり合いながら活動をしています。
フィールドワークも行いながら、地学オリンピックも目指す熱い集団でした。
そんな地学部へ入学した瞬は、スポーツクライミングと出会います。
実は花音は中学時代にスポーツクライミングの世界でかなり有名な女の子だったのです。
その繋がりから彼はクライミングに誘われ、その魅力に惹かれていきました。
でも、この物語は2019年の春から始まります。2019年にコロナ禍が始まると、2020年に予定されていた
オリンピックをはじめとする様々なイベントが延期、または中止を余儀なくされました。
瞬たちも大きな影響を受けます。
でも、そこで彼らが出した一つの答えはとても素敵でワクワクしました。
読み終わった時、本当に彼らがのびのびと生活できる世界に早くなって欲しいなと感じました。
そして、遠い過去から宇宙まで想いを広げていく地学の世界って面白いなあと思った1冊です。
(20210604)