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イラク ―狼の谷― [い]

最初から最期までかなりハードなサスペンス・アクションでした。

イラク北部にあるトルコ軍秘密部隊の本部を、突然、アメリカ軍が包囲し、兵士たちを連行した。
後日、兵士たちは開放されたが、この事件により屈辱を受けた将校は
友人ポラット宛てに遺書を残して自殺した。
友の意を受けた秘密諜報員出身のポラットは部下2人と共にイラクへ向かい、
作戦を指揮したCIA諜報員サム・マーシャルへの復讐を図る。
ポラットはホテルに仕掛けた爆弾を材料にサムをホテルへと呼び出すが、
サムは無邪気な子供たち30人を人質に取って難を逃れてしまった。
次の作戦を立てていたポラットは、サムが重要な会談に出席する予定があるのを知る。
当日、ライフルを手に建物の屋上で待ち伏せしていたところ、
別の事件でサムに恨みを持つ男が、会談中の建物付近で自爆テロを起こしてしまった…

トルコ人、アラブ人、クルド人等、様々な人たちが暮らしている土地を舞台にした作品です。
どんな内容かなあと思っていましたけれど、基本的にはエンターテイメントな作品でした。

ただし、キーになっているエピソードはとてもハードです。
同盟国のアメリカ兵によって突然に拘束されたトルコ兵たち。
結婚式の披露宴中に軍隊に銃撃され、夫を殺されてしまった新婦。
幼い子供を軍隊に射殺されてしまった若い父親。
収容所で虐待を受ける捕虜たち。そして、軍医による臓器売買。
事件は本当に痛々しいし、もう、観ていて辛いシーンばかりでした。

そんな中、一方を優遇して他方を排除していくという方法で暗躍するCIAの描かれ方は
思いっきり悪者でした(^_^.)
特に指揮者サムは狂信的な面を持っていて、かなり不思議な人でした。
また、人種や宗教の違い、そして石油の利権も絡んで、
イラクの抱える複雑さを物語っていました。
なるほどと思ったのは、アラブ人の導師が自爆テロは間違えだと説いていたことです。
彼は、コーランを正しく理解していないものが自爆テロを行うと言っていました。
宗教というものは同じものから派生しても、随分と違ってくるものなのだなあと感じました。

それにしても、このようなエピソードを盛り込んで、
1つのエンターテイメントにしてしまうところが凄いです。
そして、この作品がトルコで国民の15人に1人が観たほどの
社会的現象にもなる大ヒットを記録したと聞いてさらに驚きでした。
もともとは人気TVシリーズだったそうなので、
もしかしたら日本の「踊る大捜査線」と同じノリだったのかも知れませんね。
それで作られたのがこの内容とは、ちょっとカルチャーショックでした。

観終わった後に、頭が飽和状態になってしまった1本です。

監督:セルダル・アカル 出演:ネジャーティ・シャシュマズ ビリー・ゼイン 
2006年製作 トルコ 原題:VALLEY OF THE WOLVES: IRAQ


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石の微笑 ~フランス映画祭より~ [い]

妖しげな雰囲気にすっかりやられました(笑)

25歳のフィリップ(ブノワ・マジメル)は、業績がトップで社長の覚えも良いセールスマン。
家族は母と二人の妹。母は美容師として女手一つで子供たちを育てており、
そんな母の苦労を見て育ったフィリップは
昇給すると家へ入れるお金を増やすような母親思いの息子だった。
上の妹の結婚式を1週間後に控え、家の中では準備に追われていた。
その中でフィリップはブライドメイトになっている一人の女の子の噂を聞く。
彼女は妹の結婚相手のいとこで、何故か自分をセンタという偽名で呼ばせると言う。
彼はその場では妹たちの会話を聞き流していたが
結婚式の当日、気になるブライドメイトを見つけた。
彼女こそが、噂のセンタだった…

フランスの巨匠クロード・シャブロル監督の描いた重厚なサスペンスです。
純粋で自分の欲望に素直だからこそ常識に囚われず
人の命を奪うことに罪の意識を持たない少女。
そんな彼女と運命の愛で結ばれ翻弄されていく男の運命が描かれていました。

ちょっとミステリアスで、真っ直ぐな瞳を持つ少女センタ。
一見、自由奔放で無邪気にも見えるような彼女は、フィリップとの愛が深まるにつれて
段々と奥底に潜ませている魔性を見せ始めます。
愛と信念を貫く行動が、段々と常識を超えて狂気の世界へと入っていくのです。
彼女の無邪気な笑顔はかわいくも見えて、だからこそ不気味さも倍増でした(^_^.)

そんな彼女への激情を止められずに翻弄されていくフィリップ。
まじめで常識を持ちながらも彼女への愛へとはまっていく男に
ブノワ・マジメルはぴったりでした。
この人は何と言うか、愛に翻弄される役が似合う人ですね。

地下室にあるセンタの部屋や、入り口から3階まで続く階段など
視線の移動にもちょっと不気味感を漂わせる構成で面白かったです。

こういう愛は理解できないなあと思いつつも
いつの間にか作品の世界に引き込まれてしまった1本です。


(070316)

追伸
映画を観た後のティーチインが面白かったです。
ブノワ・マジメルはリクエストに答えて歌を披露するなど、頑張って盛り上げてくれました。
この作品については、ストーリーのキーとなる石像とのからみ(?)が興味深かったことや
監督の撮影方法は無駄なテイクが少なく、またカメラワークや撮影環境が良いなど
時間切れになるまで随分と語ってくれました(^^)


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硫黄島からの手紙 [い]

観終わった時は、声も出なかったです。

1944年。戦況は厳しくなりつつあり、戦力も乏しくなってきていた。
そんな中、アメリカ留学を経験し、優れた戦略を持つ栗林中将が硫黄島の総指揮官に着任した。
本土攻撃の拠点となる硫黄島は、アメリカにとっては次の重要なターゲットだったのだ。
まず、彼は兵士の身体を傷つける体罰を中止し、全島民の避難を決定する。
そして、これまでに進めていた海岸線での攻防に対する準備を止めて
敵を上陸させてから迎え撃つために、地下要塞の構築に取り掛かるよう指示をした。
彼の行動に賛成する者もあったが
一方、従来の作戦や昔気質の精神主義を否定された階級の高い者など
裏では否定論を繰り広げていた者も多かった。
そんな不調和音の中、とうとう圧倒的な戦力を誇るアメリカ軍が攻撃を始めた…

本当に日本映画だなあと思いました。
日本語で交わされる会話。違和感無く観られる兵士たちの行動。
そして、素直に心に届くストーリー。
やっぱりイーストウッド監督はすごい!と思ってしまいました…

戦争にヒーローはいないと伝えた『父親たちの星条旗』は
そうだったのか…とちょっと客観的な視線も持ちながら観ていましたが、
今回の『硫黄島からの手紙』は登場人物たちに、とっぷり感情移入しながら観ていました。

パン屋で身重の妻を残してきた西郷。
憲兵だったのだが上官に背いたために戦場へ送られてきた清水。
他にも戦いたくないのに召集令状一枚で戦地へと送られてきた兵士たちがたくさんいました。
彼らは家族の写真と手紙を大切に持ち、心の拠りどころにします。
その想いだけが彼らを支えているという切なさが伝わってきました。

そんな彼らが次々と死んでいく様は、かなりショックでした。
特に自決の場面は本当に辛かったです。
誰もが生きたいと願いながら死んでいく… そんな絶望感に圧倒されてしまいました。

彼らの想いや哀しみを感じつつ、戦争はあってはいけないものだだという思いを強くしました。
観終わった後も、ずっと心に残る1本です。


(061224)


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イルマーレ THE LAKE HOUSE [い]

韓国映画「イルマーレ」のハリウッドリメイク版です。

シカゴの病院で働くことになった医者のケイト(サンドラ・ブロック)は
街に住むため、お気に入りだった湖の家から引越すことになった。
彼女は名残惜しげに、新しい住人宛の手紙をポストに残した。
「配達ミスがあったら、新しい住所へ送ってください」と…
その手紙を見つけたのは引越してきたばかりのアレックス(キアヌ・リーブス)だった。
だが、アレックスは自分の前には住人がいなかったはずだと疑問に思う。
そして何度か手紙のやり取りをするうちに
ケイトとアレックスはお互いに生きている時間のずれに気が付いた…

とっても素敵でした!大人の静かなラブストーリーです。
湖の上に建つ、ちょっと非日常的な雰囲気を持つ家と美しい景色の中で
切ない大人の恋を紡ぎ出しています。

高名な建築家の父がとった母への仕打ちを許せずに
父の希望とは違う道を選ぶアレックス。
恋人とは上手くいかずに、医師という重い責任を持つ仕事に打ち込むケイト。
二人とも家に帰ると待っているのは一匹の犬だけ。
そんな境遇の中で、時間を越えて手紙をやり取りして
少しずつ心を開いて気持ちを伝え合うようになります。

切なさが似合うキアヌ・リーブスと、淋しい横顔がきれいなサンドラ・ブロック。
この二人が手紙に綴られた言葉と1冊の本(『説得』ジェーン・オースティン著)を通して
心を触れ合う様子はなんだか切なくて、でもちょっと羨ましかったです。

オリジナルの「イルマーレ」は、有名なのに未見なので比較は出来ませんが
このリメイク版もかなり素敵な作品になったのではと思います。

秋にロマンティックな気分になりたかったらお勧めの1本です。


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インサイド・マン [い]

刑事、犯人、弁護士。三つ巴の頭脳戦が炸裂するとびきりのクライム・サスペンスでした!

マンハッタンにある信託銀行で銀行強盗が発生した。
首尾よく防犯カメラをダウンさせ、行員と客の約50人を人質に取り立てこもっていた。
警察が建物を包囲する中、交渉役の刑事フレイジャー(デンゼル・ワシントン)も乗り込んで来た。
巧みに相手を揺さぶる話術で交渉するフレイジャーだったが
犯人グループのリーダー(クライブ・オーウェン)は冷静に対応し、無茶とも言える要求をしてくる。
一方、銀行の会長は強盗発生のニュースとその支店名を聞いて愕然とする。
その銀行には会長の秘密が保管されていたのだ。
その秘密を守るため、犯人との交渉役として
有能な弁護士マデリーン(ジョディ・フォスター)を雇う。
犯人の目的と動向を探るため、刑事と弁護士は犯人のリーダーへ近づいていくが…

相手の裏の裏をかいていく展開が面白かったです。
刑事、弁護士それぞれが策略をめぐらすけれど、犯人の目的がなかなか見えてこない。
単純な動機の銀行強盗ではないのか。一体、犯人は何を狙っているのか…

特に弁護士が上手く片付けたと思わせておいて、でも実はこういう手が…なんて
最後まで、だまされました。
というか、逃亡のからくりを割と分かりやすくして謎解き的には観客を満足させておいて
でも最後にはそうやって終わるのですか!?と、監督にも思いっきり一本取られた気がしました。
さすがにスパイク・リー監督です。
人種差別を受けてしまうシーンもたくさん出てきましたし。

面白くて、でも悔しいから、もう一回観たいぞと思ってしまうような1本です。


(060529)


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イーオン・フラックス [い]

シャーリーズ・セロンの美しさとかっこよさがいっぱいの映画でした。

人類の99%を死滅させたウィルスが発生した2011年から4世紀後の未来。
世界はウィルスのワクチンを開発したグッドチャイルド氏の子孫に支配されていた。
独裁支配からの開放を願う反政府組織の暗殺者イーオン(シャーリーズ・セロン)は
ずっと念願だった支配者の暗殺指令を受ける。
しかし、支配者トレバー・グッドチャイルド8世に言葉をかけられたイーオンは
身に覚えの無い記憶に囚われ、銃を向けた手を下ろしてしまった…

スタイリッシュな衣装や映像、段々と解き明かされていく謎や
SF的なエピソードが面白かったです。
根底には人間の尊厳の大切さが感じられるストーリーで
だからこそ、シャーリーズ・セロンも出演したのかな…と思いました。
でも、何と言っても原作はアニメなので、映画もあんまり難しいことは考えず
原作から登場しているらしい面白い小道具や印象的なエピソードを
楽しむのがいいのかも知れません。

今回のシャーリーズ・セロンが演じたイーオンは、暗殺者だけにずっと表情を硬くしています。
だから、時折見せる感情の表現はとても印象的に感じました。
(なんだかとってもかわいく見えるのですよね。)

それにしても、この映画はシャーリーズ・セロンが主演したからこそ
こんなに華のある映画になったのだろうなあと思います。
あのスタイルの良さは、アニメキャラクターにはぴったりでした!


(060309)


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イノセント・ボイス 12歳の戦場 [い]

脚本のオスカー・トレスの実体験を基に
1980年代のエルサルバドルをリアルに描いた作品です。

政府軍と反政府ゲリラの戦いが続いているエルサルバドル。
その内戦にはアメリカ政府の思惑によりアメリカ軍の援助も加わって、日に日に激化していった。
首都近郊で暮らすチャバは11歳。アメリカに行ったきりになっている父の代わりに
母と姉弟を支えながら生きていた。
しかし、チャバの住む町はちょうど政府軍とゲリラとの衝突が繰り返されている地域で
もはや、どこにも安全といえる場所は無い。
ベド叔父さんが訪ねて来て話を楽しんでいたのも束の間、突如として銃撃戦が始まった。
木の壁を貫通して飛び交う銃弾の中、ベッドの下に隠れていると近所からの悲鳴が起きる。
隣家へ駆けつけてみると、祖母の胸に瀕死の重傷を負った孫娘が抱かれていた…

あまりにも過酷な状況にショックで呆然としてしまいました。
12歳になると、まるで人攫いのごとく学校からトラックに乗せられ
政府軍に徴兵されてしまう子供たち。
時には自宅からも、母の手を引きちぎるようにして子供たちは連れ去られてしまう。
泣きながら連れて行かれる子供たち。
それなのに何ヶ月かたつと、彼らは完全な兵士として教育され
銃で友達を脅したり、人を撃つようになってしまう。
ちょっとしたことでも楽しく過ごせるようなかわいい子供たちだったと分かっているからこそ
とても哀しかったです。

それにしても、あまりにも多くの子供たちが犠牲になっていってしまう。
子供の死体でいっぱいになっている処刑場なんてこの世にあってはならないです。
奇跡的に生き残った主人公が、これからどんな重さを持って
生きていかなくてはならないかと思うと切なさで胸がいっぱいになりました。

ずっとずっと、忘れられない(忘れてはならない)作品になりました。


(060308)


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イン・ハー・シューズ [い]

家族の愛を感じられる映画でした。
姉妹と彼女たちをめぐる家族の物語です。

家族の愛ってかけがえのないものだけど
時に間違ったり、窮屈になったりすることがある。
だけど、時を経ても変わらない無償の愛が
家族の愛だということを思い出させてくれます。

いざこざや行き違いがもとで失った
姉妹の愛、祖母と孫の愛、父娘の愛などが
心の交流を通じて甦ってきます。
中でも、長年離れていた孫へ接していこうとする祖母は印象的です。
祖母役のシャーリー・マクレーンは上品で素敵でした。

また、容姿にコンプレックスをもっている姉と
容姿以外に自信が無い妹が
それぞれ自分に足りなかった自信を
見つけるところも良かったです。
特に、勉強嫌いで、読解力や計算力が無いマギーが
お年寄りたちに助けられて、やがて
自信を取り戻していくところはちょっと感動的です。

最後のキャメロン・ディアスの笑顔が
とってもかわいかったです!


(051028)


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いつか読書する日 [い]

今年の“心にずーんとくる映画”No.1決定。

毎日、真面目に働いて生活している一人の女性の
人生の重さをそのまま描ききったという感じです。

30年以上の片思いの結果はこうなるのですか…と、ちょっとショックでした。
「いつか読書する日」というタイトルの重さが、なんかすごかったです。

この映画を作った人も演じた人もすごい。
しばらく心に余韻が残る映画。

観て良かったです!


(050804)


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