検事長の周りは同僚から部下まで陰険で怖い敵だらけでした…
検事長のフリッツ・バウアーは疲れていました。
仕事人間の彼は家族から離れて一人暮らし。眠るには酒と睡眠薬が必要な毎日です。
ある夜などはバスタブで眠りに落ちて溺れ死ぬところでしたが、
危うく管理人に気付いてもらって助かったこともありました。
その頃の検事長の周辺は不穏な雰囲気に包まれていました。
休みを取ると資料が無くなっているのは良くあることで、秘密の話も敵に筒抜けです。
そもそも、ユダヤ人のバウアーは元ナチス将校たちを追って責任を取らすことを宿命としていましたけど、
未だに元ナチス党員が政府関係者に多く存在した状況下では反対勢力のほうが強かったのです。
それでも地道に海外へと逃亡した者たちを追っていたある日のこと、
バウアーの元にアルゼンチンから一通の手紙が届きます。
それは、強制収容所計画の総元締めとして追われながらも今まで行方不明になっていたアドルフ・アイヒマンが
アルゼンチンに居ると告発する内容でした。
このままドイツで捜査をしてもすぐに相手に情報が流されて逃げられてしまうと感じたバウアーは独りで動き始めます。
そして、休暇で向かう目的地を妹の家からフランス経由イスラエルへと密かに変更しました。
それにしても、色々と考えさせられる物語でした。
邦題は“アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男”ですけど、原題はバウアーに対する国みたいな意味で
当時のドイツの中で主人公がいかに自分の信念を持って仕事に取り組んで行ったかが描かれています。
常に周りに気を許せず、スパイ活動や暗殺などもありえそうな時代には、
そんな信念が支えになるしかありませんね。
それが一番伝わってくるのは、テレビ討論会のような番組で若者たちからの質問に答えていくシーンです。
主人公が戦争が終わって避難先からドイツへ帰国した時の気持ちや
今の若者に期待することなどを述べています。
監督さん曰く、このシーンの音声は本人の肉声らしいです。
主人公が秘密裏にモサドと連絡を取り合うシーンなどのサスペンス要素にもドキドキしましたけど、この番組のシーンも印象的でした。
観終った時、こういう時代を経て今があるのだなあと考えさせられた1本です。
監督:ラース・クラウメ 出演:ブルクハルト・クラウスナー ロナルト・ツェアフェルト
2015年 ドイツ 原題:Der Staat gegen Fritz Bauer
(20161017)
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公式サイトはこちらへ http://eichmann-vs-bauer.com/追伸
この映画はドイツ映画祭2016で観ました。公開は2017年1月7日以降の予定です。