アズミ・ハルコは行方不明

山内マリコ著の同名小説をもとに松居大悟監督が蒼井優主演で映画化したちょっと不思議なドラマです。
予告編を観て、一体何が起きているのか気になるなあと原作は未読のままチャレンジして観ました。
目まぐるしく時間軸が変わっていく展開に混乱しつつも、見通しの見えない物語の行方を見つめていました。

今の日本を映し出すとこういう感じにもなるのかなあと微妙な気持ちになりました。

主人公の失踪直前のシーンから始まる物語です。
安曇春子（蒼井優）は、ある夜、突然に姿を消しました。
その後、交番横の掲示板にポスターが貼られ、春子は失踪者として彼女の写真が公開されました。

ユキオ（太賀）と学（葉山奨之）は暇そうにしている警察官（加瀬亮）に見つからないように
こっそり安曇春子のポスターを写真に撮りました。
彼らは外国の落書きアートに傾倒している二人組で、次の落書きに使えそうな写真を探していたのです。
その写真から型を取った彼らは、春子の顔をスプレーでどんどんペイントしていきます。
そして、彼女の顔の落書きは、街中の話題となっていきました。

それにしても、細かいところまでリアルでした～
国道沿いにある地方都市の雰囲気と、そこで生きる若者たちの姿がそのまま映し出されていました。

現在のパートでは春子は失踪中です。
その代わりユキオや学、そしてユキオの恋人・木南愛菜（高畑充希）が中心になります。
彼らは落書きアートで世間に認められたいと願っています。
自分たちが描いたことがばれると警察に捕まってしまうので、こっそりと描いていました。

でも、SNSでの話題は自分たちの落書きアートのことでないとちょっと不満も^_^;
そんな二十歳の若者たちが、調子に乗って様々な場所へ落書きをしているシーンは
楽しそうだけどどこか壊れているなあと感じました。

また、この現代には、集団で男性を暴行する女子高生たちが登場します。
彼女たちの男性を制裁するという行動の裏に何があるのかは分かりませんけど、
女性には手を出さないと真面目に言う彼女たちが男性をボコボコにしていく表情はとても怖かったです。

過去のパートでは、もちろん春子は普通に生活しています。
彼女は会社にも恋人にも家庭にも多くの不満と不安を抱えていました。

観ているだけの私でも、春子の職場の男女格差には怒りを覚え、彼女の恋人には酷い人なあと思い、
彼女の家庭の雰囲気には辛いなあと思ってしまうくらいです。
その後、ずっと頑張っていた彼女が消えたくなってしまったのも解るなあと感じてしまいました。

蒼井優さんはもちろんですけど隅から隅まで役者が揃っていて見応えがありました。
また、原作よりも時系列が入り組んだ展開は解り難かったけど面白かったです。
観終った時、未来を模索していた彼らに何か道は見つかるのかなあと考えてしまった1本です。



監督：松居大悟　出演：蒼井優　高畑充希　太賀　葉山奨之　石崎ひゅーい　菊池亜希子　山田真歩　落合モトキ　芹那　花影香音　柳憂怜　国広富之　加瀬亮
2016年　日本
（20161030）

→公式サイトはこちらへ　http://azumiharuko.com/

追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開は12月3日以降の予定です。