私の日々の楽しみのひとつ、通勤電車の中で読んだ文庫本の中で面白かった本の感想です。
今回は『君が夏を走らせる』です。
『君が夏を走らせる』 瀬尾まいこ/著 新潮文庫高校生の男の子が1歳10か月の女の子とひと月を過ごす物語です。
主人公は『あと少し、もう少し』から2年後の大田くんです。
ところで、私はシリーズものの新刊を読む前に、前作を読むことが多いです。
新刊の読書は本棚(というか、最近は本溜まりになっている…)から前作を探すことから始まります。
『あと少し、もう少し』も5年前に読んだ文庫本だったので、探して読み返しました。
『あと少し、もう少し』は弱小陸上部の部長・桝井くんが中学最後の駅伝に出場するために、
校内からメンバーを集めて駅伝大会に出場する物語です。
学校からドロップアウトしつつあった不良の大田くんは桝井くんと小学校が一緒だった縁で
スカウトされ仕方なく参加します。
見た目は不良だけど中身はいい奴の大田くんは、最後には必死に全力を振り絞って走り抜きました。
『君が夏を走らせる』はそんな大田くんが高校2年生になった夏の物語です。
彼の元に中学時代の先輩からバイトをしないかという連絡が入ります。
その先輩は高校を中退して結婚し、今は運送関係の会社で働いています。
先輩の会社でのバイトかと軽くOKした話だったのに、先輩に会ってみるとバイトの中身は
彼の娘で1歳10か月になる女の子・鈴香の子守でした。
俺に幼子のお世話が出来るわけがないと固辞するものの、
第二子がお腹にいる先輩の奥さんが切迫早産の危機で入院することになったために
頼れるのはもう大田くんしかいないと懇願されて仕方なく引き受けます。
初日から泣き続ける鈴香に心身ともに振り回される大田くんでしたけど、3日も過ぎると慣れてきます。
散歩に出始める頃には公園でママ友も出来るほど。やっぱり、やる時は頼りになる大田くんなのです。
『あと少し、もう少し』とはまた違った温かさと元気を貰える物語でした。
読み終わった時、いつか、また大田くんに出会いたいなと思った1冊です。
(20201120)