私の日々の楽しみのひとつ、通勤電車の中で読んだ文庫本の中で面白かった本の感想です。
今回は『風神雷神』(上・下巻)です。
『
風神雷神 上』 『
風神雷神 下』 柳広司/著 講談社文庫
ずっと気になっていた柳広司さんの『風神雷神 風の章』『風神雷神 雷の章』が
文庫本になったのでチャレンジしてみました。
幼少の頃から絵の才能に秀でていた俵屋宗達が風神雷神図屏風を創り上げるまでを描いた歴史小説です。
物語は醍醐の花見から始まります。
幼い頃に本家から扇のたわら屋へ養子にきた伊年は、いつもぼんやりしている男の子でした。
時間が許す限り絵を描き続け、ぼんやりしている時は頭の中が絵でいっぱいになっています。
それから十数年が過ぎ、店の手伝いとして醍醐の花見で扇を運んでいる姿はやっぱり頼りないままでした。
そんな伊年が絵の道を邁進することが出来たのは、彼を養子にと望んだ俵屋仁三郎の理解のおかげです。
仁三郎は伊年の絵の才能に惚れ込み、絵に熱中し過ぎることを笑って許していました。
見込み通り、伊年は絵の才能を発揮します。
彼のデザインした扇は高い評判を得て、たわら屋は扇の名店として歌に登場するほどになりました。
また、伊年の二人の幼馴染、豪商・角倉屋の与一と紙屋の宗二が与えた影響も大きいです。
彼らが居たからこそ伊年の絵の才能が広く認められ、
本阿弥光悦や公卿・烏丸光広の目に留まることになります。
力のある二人のおかげで伊年はより多くの名画と出会い、
広い世界を知ってさらに才能を伸ばしていきました。
私は歴史の疎いので、本や映画や美術展から歴史を知ることが多いです。
今作も当時の事情が伝わってくるような丁寧な描写が多くて、ちょっと物知りになりました(^^)
あと、美術展で目にした本阿弥光悦と俵屋宗達のコラボ作品が
こんなふうに誕生したのかとワクワクしました~
また、私が最も好きな絵「風神雷神図屏風」にまつわる逸話も面白かったです。
読み終わった時、俵屋宗達の風神雷神図屏風にとても会いたくなった1冊です。
(20210405)