私の日々の楽しみのひとつ、通勤電車の中で読んだ文庫本の中で面白かった本の感想です。
今回の本は『天空の約束』です。
『天空の約束』 川端裕人/著 集英社文庫梅雨が近付くと雲のことを頭に思い浮かべる時間が多くなりますね。
そんな時にふと読みたくなる本が川端裕人さんの『雲の王』。
(やっぱり、昨年の5月にブログに書いていました。)
そして、『雲の王』の後に読みたくなるのがこの『天空の約束』です。
今回の『天空の約束』は『雲の王』と同じく雲を読む能力を持つ人々の物語です。
ただし、『雲の王』の登場人物たちが能力を持つ一族として細々と繋がっていたのに比べて、
今作の登場人物たちには自分の能力を自覚していない人もいます。
そんな様々な人が登場する短編集です。
大学の建築学科の准教授を辞めて、微気候を工夫した家屋つくりを目指す建築家。
屋内に様々な天候を創ることが出来る雲のアーティスト。
睡眠発作に襲われて、夢うつつの高校時代を過ごしたことがある会社員。
そして、戦時中に代用教員として山深い小さな分校へ赴任した教師と生徒たち。
彼らの人生を大きく左右しているのが、天気に関わる能力です。
自覚は無いながらも能力を生かしている人や、能力に振り回されてしまう人、
そして、振り回されつつも、その時期を乗り越えて落ち着きを取り戻した人。
彼らが少しずつ近付いていく展開にちょっとドキドキしました。
久々に読んで、遠くて広い雲の世界に想いを馳せました。
読み終わった時、また来年も読みたくなるかもとニッコリした1冊です。
(20210525)