昨年の東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞した作品です。
30年前の中国を舞台に、ひと冬の出来事を静かな風景と子供の視線の中で描いていました。

文化大革命から2年がたった1978年の冬。
水道も凍るほどの北部にある小さな町に、一人の少女シュエン(シェン・チアニー)がやって来た。
父の戦友を頼って北京から来た彼女は美しく洗練されていて、たちまち町民の話題の人になる。
隣家に住む小学生のファントウ(チャン・トンファン)と工場勤めの兄スーピン(リー・チエ)は
それぞれ彼女に憧れを抱いた。
無口だけど絵の得意なファントウは外で絵を描いている時に彼女に声をかけられ、絵の上手さを褒められる。
彼女とすんなり親しくなった弟に対し、兄スーピンは彼女に声をかけたくても上手くいかない。
遠くから彼女の姿を眺めているだけだった…

簡単な感情移入を拒否するかのように、とても少ない言葉の中で展開される物語でした。
観終わった時、何とも言えない無常さを感じました。

兄スーピンの恋と彼がたどった運命。
無口なファントウが最後に見せた強さと笑顔。
そして、文化から取り残されるように遠い町へやって来た少女の儚げな様子。
その全てが乾いた寒い冬の風景と、放置されたままになっている廃屋の中に溶けていくような
そんな印象の物語でした。

それにしても、時々、理解を超えた行動が出てきてビックリしました~
拾ったもの(盗ったもの)は自分のものという精神。
兄弟の短気なお母さんが見せる強烈な怒り。(すぐに手を出します…)
そして、まさにストーカーでしょう!?思えてしまうスーピンの行動。
(気になるからって、彼女のものを勝手に盗ったりしちゃダメでしょう(^_^.))
でも、それも純朴とも言えるストレートな心の表われなのかなあと考えながら観ていました。

あの乾いた草原の風景はずっと心の中に残っているだろうなと思った1本です。



監督:リー・チーシアン 出演:チャン・トンファン リー・チエ シェン・チアニー
2007年 中国 原題: 西幹道/THE WESTERN TRUNK LINE
(080716)