少年の長い一日を描いた作品です。
家族との強い絆や深い悲しみがひたひたと感じられる物語でした。

ある朝、少年フアンは車をぶつけて故障させてしまった。
工場はあるが休憩中か休業中ばかりで、フアンは修理工場を探しながら彷徨う。
ようやく人がいそうなところへ声をかけたが、工場の老人に泥棒に間違われてしまう始末。
なんとか車のことを伝えると、やっと協力してくれそうになる。
老人は少年の話を聞いて故障の原因の目星を付けると、少年に部品を探すように言って昼寝を始めてしまった。
部品が見つからず諦めた少年は、今度は部品を売ってそうな店を見つけた…

故障した車を直すために奔走する少年。
困っている少年はちょっと気の毒ですけど、明るい日差しと乾いた空気を感じさせる物語は
のんびりした雰囲気で始まります。
始めは泥棒と疑うのに事情を話したらコロッと納得して少年を信用したり、
車の故障を直す前に家へ連れて行って、お母さんと一緒に朝食をご馳走しようとしたり…
ほのぼのしている作品だなあと思っていると、次第に少年の背景が見えてきます。

少年は突然に家族を襲った大きな悲しみに押しつぶされそうになっていました。
彼の背負った悲しみは、ひとりでは癒すことが出来ません。
身体は大きく育っていても彼はまだ少年なのです。
でも、母は一人部屋にこもって泣いているだけだし、弟はまだ幼くて事態が分かっていません。
頼りになる人は居らず、ひとりで町を彷徨っているのです。
そんな少年の姿はとても心細そうで、独りにはしておけないような気持ちにさせられます。
少年と出会った人々も、彼と関わっていくうちに彼の心を開こうと少しずつ近付いていきました。

とうとう心を開いて気持ちを表した後、ようやく見ることが出来た少年の笑顔にほっとすると同時に、
人は弱いだけではない、強く成長していくことも出来ると改めて感じた1本です。



監督:フェルナンド・エインビッケ 出演:ディエゴ・カターニョ エクトル・エレーラダニエラ・ヴァレンティーネ
2008年 メキシコ 原題:Lake Tahoe
(20081023)

追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開予定は未定です。