幼い頃に母を亡くしたリリィ(ダコタ・ファニング)は無口な父に育てられた女の子。
桃の果樹園を営んでいる父は彼女を厳しく管理し、少しでも目の届かないところへ行くと
感情的に問い正して罰する有様だ。
そんなリリィは優しさや愛情を知らずに14歳の誕生日を迎えた。
リリィは誕生日プレゼントの代わりに、ほとんど記憶の無い母のことを教えてくれと父に頼む。
暗い顔をした父は彼女に“母はお前を捨てた”と冷たい言葉を浴びせた。
母の愛を信じたいリリィは父に激しい反発心を抱く。
ある日、リリィの家で働く召使ロザリン(ジェニファー・ハドソン)が白人男性に反抗し、
ひどい暴行を受けてしまう。
時代はようやく黒人も投票できるような権利の平等をうたい始めていたが、現実にはまだ遠い状況だった。
入院したロザリンの身の危険を感じたリリィは彼女と一緒に逃げる決心をする。
そして、二人はリリィの母の写真裏に書かれていた町へと旅立った…
愛情に飢えた少女の心の痛みがとても切なかったです(T_T)
まだ人種差別の激しかったアメリカ南部では黒人の人権の主張など程遠く、
例えば映画館も席が分かれている状況です。
そんな時代の中で両親の愛を知らない少女は、
家の世話をしてくれる召使などの黒人たちへの差別心を持たず、
逆に親しみをもって接するような少女として育っていました。
ある日、少女は人生最大の疑問を持ちます。自分は母に愛されていたか?と言うことです。
その疑問に対する父の冷たい答えを信じたくない少女は
ロザリンの事件をきっかけに、その答えを探すため家を出ます。
少女が持つ母の形見は、一枚の写真と黒い聖母像の絵だけです。
写真の裏に書かれていた町にたどり着いた二人は、黒い聖母像に導かれるように
養蜂所を営む黒人姉妹の家へとたどり着きます。
そして、リリィは密かに抱えていた心の辛い痛みを少しずつ開放していきました。
久々に観たダコタ・ファニングは感情を無くした少女をしっかりと演じていました。
感情を出さない演技と言うのはとても演じ難かったと思うのですけど、
無言の瞳に思いっきり気持ちを込めて哀しみをみつめていました。
手足が細長く伸びて痩せている姿はまだ大人ではなくて子供の雰囲気ですけど、
きっとこれからどんどん綺麗になっていくのだろうなあと感じました。
温かい愛をようやく手に入れた少女の幸せを思いつつ、
観終わった時、少しだけほっとした気持ちになった1本です。
監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド 出演:ダコタ・ファニング クイーン・ラティファ ジェニファー・ハドソン ポール・ベタニー
2008年 アメリカ 原題:THE SECRET LIFE OF BEES
(20090323)