N.Y.でCM音楽の作曲家をしているハーヴェイ・シャイン(ダスティン・ホフマン)は
最近、どうも仕事の調子が良くない。
同僚や上司から存在を疎ましく思われ始めているようで、
新作CMのプレゼンにも無理に来るなと言われてしまうほどだ。
折りしも翌日から週末にかけて、娘の結婚式のためにイギリスへ行く予定が入っていた。
上司はゆっくりしておいでとハーヴェイを送り出したが、
彼としては自分のキャリアを失うかどうかの瀬戸際で落ち着けない。
それでも、離婚した妻とは仲が悪いままだが、一人娘スーザンのことは心から愛していたハーヴェイは
苦手な飛行機に乗って何とかイギリスの地へ渡り、指定のホテルへたどり着いた。
だが、元妻に嫌われている上に、仕事で携帯電話が鳴ってばかりのハーヴェイは、
結婚式前夜の食事会でもみんなから疎まれる存在になっていた…
ダスティン・ホフマン演じるハーヴェイの不器用な姿と
エマ・トンプソン演じるケイトの哀愁を感じさせる生活の様子がちょっと切なかったです。
人生の下り坂に入っているようなハーヴェイ。
最近は仕事仲間もハーヴェイの曲を古いと思っていて、
上司に至っては彼をお払い箱にしたいと言いたげな雰囲気が伝わってくるほどです。
娘の実父ということで結婚式に呼ばれてはいますけど、
離婚後はじめて顔を合わす元妻と仲良く話せる訳はないし、娘は継父の方が親しそうです。
折角、アメリカからイギリスまで飛んで来たのにハーヴェイは疎外感いっぱいでした。
一方、空港で働いているケイト・ウォーカー(エマ・トンプソン)は部下にも慕われる40代女性。
近所に住む一人暮らしの母親の面倒をみながら、毎日、真面目に勤めています。
趣味は読書と小説を書くこと。ライターの講習にも通っていて、なかなか真剣です。
そんな彼女は実は男の人と親しく付き合うのが苦手です。
傷つきやすい心を隠しているケイトは、年齢的にも恋には積極的になれないのです。
しかも、一人暮らしで暇を持て余している母親がしょっちゅう携帯に電話してきては彼女の行動を邪魔します。
ケイトは恋をしたくても恋が出来ない、そして恋をすることに臆病になっている女性でした。
そんなハーヴェイとケイトが出会います。
そこからの展開はわりとお決まりかも知れません。
でも、この二人だからこその味わいがいいなあと思ってしまいます。
不器用でちょっと頑固で人生に愛想を尽かれていたハーヴェイとケイトの大人だからこその会話がいいです。
相手を思いやりながら、穏やかで落ち着いた態度で相手の心を解きほぐしていくなんて
人生の機微を知っている今のハーヴェイだからこそ出来たことなのだろうなあと感じました。
原題は“LAST CHANCE HARVEY”。
これがラストチャンスとスパッと自分の人生をケイトへ向けたハーヴェイの笑顔に
観終った時、ほっと心が温かくなった1本です。
監督:ジョエル・ホプキンス 出演:ダスティン・ホフマン エマ・トンプソン アイリーン・アトキンス キャシー・ベイカー リアーヌ・バラバン
2008年 アメリカ 原題:LAST CHANCE HARVEY
(20100309)