大学教授のジョージ(コリン・ファース)は今日で人生を終わらせようとしていた。
8ヶ月前に16年間を過ごしたパートナーを交通事故でなくしてから、眠ることさえ苦痛になっていたのだ。
今日の義務を終え、つつがなく一日を過ごしたら心置きなくこの世を去る予定でいた。
朝の時間を平穏に過ごそうとしたジョージはパンが冷凍庫に入っているのを知って苛立つ。
また、トイレでのんびりしていても、隣家のいたずらっ子たちが騒いでいて落ち着かない。
しかも、先程から電話のベルが鳴り響いていた。
電話に出たジョージは、かけてきたチャーリー(ジュリアン・ムーア)と今日のディナーの約束をする。
そして、ようやく出かける決意をすると、車を大学に向けて走らせ始めた…
コリン・ファースの豊かな表情に魅せられました~
一人の男の1日を描いた物語です。
彼はパートナーを失った苦しみから逃れるために死ぬ決意をしています。
そんな彼の見た1日の風景を、時にピントをずらし、時に色を無くし、
時にスローモーションにしながら、その心の移ろいを映し出していました。
その映像はとても美しく感じました。
彼はとても几帳面な人です。
引き出しの中も身に付けているものも、いつもキチンとしています。
彼は出かける前に自殺の支度も整えています。
死んだ自分に着せる服は背広からワイシャツ、ネクタイやカフス、そして靴までも揃えていきます。
もちろん、親しい人へ宛てた手紙も忘れません。
そして、行動に移そうとしました。
そんな彼の目に映るその日の風景は魅力的でした。
また、自分ではどう思っているか分かりませんけれど、彼自身も魅力的な人です。
チャーリーの家へ行く前に酒を買いに行くと、店先でスペイン語を話す男から声をかけられます。
お互いに惹かれるのですけど、彼は今日で終わりと思っているので、会話以上のことはありません。
それでも彼の心の揺れをさまざまな表情で伝えてくれます。
また、彼を心配する男子学生(ニコラス・ホルト)の存在もあります。
その子は彼と心を開いて話したいと家まで来ます。
心の底から様子の違う彼のことを心配していたのです。
そして、彼もその子の存在に触れ、何かを感じていきました。
それにしても、コリン・ファースはすごいですね。
台詞の無いシーンも多いのですけど、その方が豊かに語りかけてくるような気がしました。
そして、初監督でこんなに印象的な作品を創り上げたトム・フォード監督の才能もすごいなあと感じました。
エンドロールに流れる曲を聴きながら、1日で人生を考えさせられたなあと感じた1本です。
監督:トム・フォード 出演:コリン・ファース ジュリアン・ムーア マシュー・グッド ニコラス・ホルト
2009年 アメリカ 原題:A SINGLE MAN
(20100927)
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公式サイトはこちらへ追伸
この映画は試写会で観ました。公開は10月2日以降の予定です。