18世紀のイギリスでは奴隷の労力によって飛躍的に発展をしていた。
だが、アメリカでは独立の気配が、フランスでは革命の足音が近付いていた。
21歳の若さで政治家となったウィリアム・ウィルバーフォース(ヨアン・グリフィズ)は自分の将来に悩んでいた。
会議で達者な弁論を披露することも遣り甲斐はあるのだが、
貴族が中心の政治の世界にはやっぱり違和感を覚えてしまうのだ。
特に、彼らが奴隷を物のように売り買いしていることは、敬虔なクリスチャンである彼には許しがたい現実だった。
牧師を目指す道に気持ちが傾いていたある日、彼は友人の議員ウィリアム・ピット(ベネディクト・カンバーバッチ)から相談を持ちかけられる。
そのうちに自分は若くして首相になる予定だから、その時には側近として助けて欲しいと言うのだ。
そして、ピットはウィルバーフォースに自分の友人たちを紹介した。
彼らはみな反奴隷制度のために戦おうとしている人々だった…
「アメイジング・グレイス」の詩の由来はとても悲しかったです(T_T)
人生をかけて奴隷制度と戦ったウィリアム・ウィルバーフォースの物語です。
彼は議員であり、神を信じるクリスチャンです。
奴隷制度の現実を知り、奴隷を扱うことは人間として許されることではないと感じます。
そして、議会に制度廃止の案をかけます。
でも、議会に出席するような議員たちは、みな奴隷制度の恩恵に与っている人ばかりです。
また自分の地盤である町の不利益になるようなことをしたくはありません。
ウィルバーフォースは毎年のように廃止案を提出しますけど、議員たちの反対でことごとく不可になります。
そして15年が経ち、彼の身体はストレスと不健康で壊れかけていました。
そんな時、友人たちの誘いで美しい女性バーバラ(ロモーラ・ガライ)と出会います。
彼女は裕福な人にありがちな勝気な性格でしたけど、
ウィルバーフォースの活動をずっと応援していた人々の一人でもありました。
彼女の前向きな性格と明るさで、彼は少しずつ自分を取り戻していきます。
それは時代の流れと共に、彼に再び前へ進もうとする力を与えていきました。
それにしても、「アメイジング・グレイス」の詩の由来を初めて知りました。
作詞をした牧師ジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)が元奴隷船の船長であったことで
彼がどれほどの悔恨を込めて創り上げたのかを感じました。
自分は一人ではなく多くの幽霊と共にいると言った時の彼の絶望的な表情には
一生を掛けても消えない苦しみを感じました。
そして、その裏にどれほど多くの酷い事実があったのかを考えさせられました。
ウィルバーフォースとジョン・ニュートンの出会いがなければ、きっと歴史は違っていたのですよね。
映画を観終わった時、何か運命的なものを感じると共に、偉業をやり遂げた主人公の笑顔が印象に残った1本です。
監督:マイケル・アプテッド 出演:ヨアン・グリフィズ ベネディクト・カンバーバッチ アルバート・フィニー ロモーラ・ガライ マイケル・ガンボン
2006年 イギリス 原題:AMAZING GRACE
(20110224)
→公式サイトはこちらへ http://www.amazing-movie.jp/追伸
この映画は試写会で観ました。公開は3月5日以降の予定です。