スティーブ・シミズは89歳。妻とゴルフをしている姿はとても穏やかで幸せそうだ。
だが、彼はカメラに向かって自分の手の長さはこんなに違うからクラブを振るときに調整すると説明した。
彼は第二次世界大戦中に日系アメリカ人たちで編成された442部隊に所属し生還した数少ない兵士の一人なのだ。
そして、彼は当時を思い出していた…
伝説的な功績を残したけど、近年まではその詳細を公表されていなかったアメリカ軍の442部隊の姿を
生存者たちや関係者たちのインタビューと当時の写真を交えながら綴っている作品です。
彼らがどのようにして生まれたのか、どのような作戦を経て何をしてきたのか。
出来る限り詳細に伝えてくれます。
日系人と言っても、ハワイ出身の部隊とアメリカ本土からの部隊では、
かなり雰囲気が違っていたという話は興味深かったです。
ハワイは日系人の割合が多く、実際のところ日系人を排除してしまうと部隊として
成り立たないという事情から、特別措置として日系部隊が作られました。
一方、アメリカ本土では日系移住者たちがみな土地と財産を取り上げられて収容所送りになり、
そこから家族のためにと決死の覚悟で入隊した男たちで部隊が作られました。
当初、二つの部隊は仲が悪かったそうです。
でも、ハワイ出身の日系部隊がアメリカへ渡って収容所の実態を見た時から、
その確執も解消されていきました。
そんな彼らはヨーロッパに渡って活躍し、驚くほどの勲章を授与されています。
また、あまりにも多くの負傷者と死者を出しています。
他の部隊には成し得なかった危険な任務を負うことが多かったのです。
中でも一番印象的だったのは、偶然に行き着いたナチスの収容所を解放したことです。
収容所から助け出された人々は、442部隊がいなかったら命は無かったと語っていました。
それにしても、知らないことが多すぎることがショックでした。
部隊のことは何となく聞いたことはあります。
でも、実際にどんなことを成し遂げたのかは本当に知りませんでした。
また、実は一番ショックだったのは彼らの話ではなく、ナチスの収容所の写真でした。
スクリーンに映し出された時、何も考えられずに呆然としてしまいました。
あの写真は忘れられません。
そして忘れてはいけないものだと感じました。
生存者たちが戦争の記憶に苦しみながらも、結婚し家族を築き上げていることが感慨深かったです。
人間の強さと共に、生きている命の大切さをしみじみと感じました。
観るまではとても勇気のいる作品だったのですけど、
観終わった後はやっぱり観るべき作品だったと思いました。
彼らの歴史を残してくれたこの作品に出会えて良かったと感じた1本です。
監督:すずきじゅんいち 出演:ダニエル・イノウエ ジョージ・タケイ スティーヴ・シミズ ネルソン・アカギ ローソン・サカイ
2010年 日本/アメリカ 原題:442 -LIVE WITH HONOR, DIE WITH DIGNITY-
(20110116)
→公式サイトはことらへ http://www.442film.com/