10歳のシャンは父と息子二人だけの家族だったが、その父が病死してしまった。
親戚はおらず、葬式の手配もろくに出来ない。
遺影用の写真を用意しろと言われて、シャンに出来たのは鉛筆で父の似顔絵を描くことだけだった。
葬式に来てくれたのは楽団の一団で、かつての父の同僚たちだけだ。
父の最期にと、シャンが川で洗濯して用意した制服に楽団の電話番号があり、誰かが連絡してくれたらしい。
楽団はシャンに頑張れと声を掛けて去り、そして彼は一人になった…
少年はどんなふうに成長するのだろうかと考えてしまいました。
孤独になった10歳の少年の物語です。
彼は世話をしてくれる大人がいなくなります。
食事は学校で保管してあった弁当を盗んで食べるだけ。
でもそれも、すぐに用務員さんに見つかってしまいます。
用務員さんは怖い顔をしながらも彼を気に掛けてくれますけど、とても厳しい人でもあります。
10歳の少年に泣くなと叱り、自分が少年の頃に体験した戦争の恐ろしさを語り、
生きることの厳しさと、その中でも生き抜くことの大切さを教えます。
そうこうしている間に、少年は一度は自分を捨てた母に引き取られていきました。
母との新しい生活には、希望や明るい未来は感じられません。
母が新たに結婚した夫は何か様子がおかしい雰囲気です。
しかも、数年前にシャンの兄が行方不明になってしまったという事実も明らかになります。
シャンが家に居るのは怖いと思い始め、見えない壁に押しつぶされそうになった時、
彼に声を掛けてくれたのは、本土へ帰郷しようと挨拶に来た用務員さんでした。
それにしても、厳しい現実を感じさせる物語でした。
10歳の少年が用務員さんの最後の言葉を、大人になるまでちゃんと覚えているかは不明ですけど、
なんとか独り立ちできるまで生き延びて、この閉塞した社会から飛び出して欲しいです。
そう願わずにはいられないような物語でした。
少年の最後の似顔絵はまだ描かれていませんでした。
見終わった時、未来はまだ決まっていないということに希望を持ちたいなと感じた1本です。
監督:チョン・モンホン 出演:ビー・シャオハイ ハオ・レイ レオン・ダイ テリー・クァン ナードウ チン・シーチエ
2010年 台湾 原題:The Fourth Portrait /第四張畫
(20110918)
追伸
この映画は第24回東京国際映画祭のプレイベント上映会で観ました。