明日を継ぐために

アメリカで暮らすヒスパニック系の父子の絆を描いた人間ドラマです。
どんな物語かはほとんど知らなかったのですけど、
メイン写真になっている親子の表情に惹かれたのでチャレンジしてみました。
彼らが置かれている現状の厳しさと、それでも希望を捨てない姿が印象に残る作品でした。

9.11以降のアメリカが少し理解できました。

メキシコからやって来た父とアメリカで生まれた息子を取り巻く現状を描いた作品です。
14歳の息子はアメリカ国籍ですけど、父は15年以上アメリカで暮らしていても不法移民です。
許可証も運転免許書もありません。
仕事は同じメキシコ出身の男とコンビで庭師をしています。
道具もトラックもその男の物で、彼はそのトラックに乗せてもらいながら男に使われる身なのです。

ある日、そんな父に転機が来ます。
ボス格の男がお金を貯め終えて故郷に帰るというのです。
男は相棒だった父に道具とトラックを買わないかと持ちかけます。
一時は金が無いために購入を諦めた父ですけど、結婚してアメリカ国籍を得た父の妹が
密かに貯めていたお金を夫に内緒で貸してくれます。
とうとうトラックを手に入れた父は、これで未来が開けると笑顔になります。
でも、運命はあっと言う間に彼の手をすり抜けていきました。

それにしても、今では開けたアメリカは本当に消えてしまったのですね。
過去に犯罪歴が無くても納税をしていても、幼い子供がいたとしても片親であったとしても、
不法移民は強制送還されてしまいます。
しかも貧しいと弁護士も雇えないし、許可証も申請できません。貧乏人には希望が無いのです。
そんな中で問いかけられた息子から父への問いかけ“貧乏なのに、なぜ僕を作ったのか”には
胸が締め付けられました。
そして、その問いかけに答える父の真摯な答えには、息子への愛のすべてが込められていました(T_T)

見終った時、父の想いを受け止めた息子の姿に希望を感じました。
いつかこの親子に、希望に満ちた優しい日々が訪れますようにと願ってやまなかった1本です。



監督：クリス・ワイツ　出演：デミアン・ビチル　ホセ・ジュリアン　ドロレス・エレディア　ホアキン・コシオ　カルロス・リナレス
2011年　アメリカ　原題：A Better Life
（20111024）

追伸
この映画は第24回東京国際映画祭で観ました。公開予定は未定です。