旅の中で出会った人は、みんな人の弱さと痛みを知る心優しい人たちでした。
亡き妻の願いを叶えるために、遺骨を持って富山から長崎までの旅に出た男の物語です。
倉島(高倉健)は富山の刑務所で指導技官として、妻と共にひたすら誠実に生きて来ました。
数日前に病気で妻(田中裕子)を亡くして喪失感を抱えていたある日のこと、
とあるNPO団体の人が妻の遺言状を携えて倉島を訪ねて来ました。
そして、遺言状は2通あり、1通はその場で彼に渡されますが、
もう1通は長崎へ局留め郵便で送られると教えられました。
その場で2通とも貰えないことを不思議に思いながらも、それが妻の遺志と聞いて倉島は頷きます。
局留め郵便物の保管期限は10日間。それまでに倉島は平戸へ着かなくてはなりません。
すぐに1通目の遺言状を開けると、そこには遺骨を彼女のふるさとである平戸の海で
散骨して欲しいという願いが、彼女の描いた可愛い絵と共に書かれていました。
病床の妻に、治ったら一緒に旅をしようと約束していた倉島は、
彼女を乗せるはずだった車で平戸を目指すことにします。
旅の前に、職場の上司・塚本(長塚京三)の机に退職届を置いていくと、彼は届けを受理せず、
この旅行の間は休暇扱いにするから必ず帰って来いと強く言いました。
夫婦共に付き合いがあって仲の良かった倉島のことをとても心配していたのです。
倉島は彼に丁寧に挨拶をすると、富山から平戸までの1000km以上もの旅に出発しました。
それにしても、色々な人生に出会う旅でした。
キャンピングカーで一人旅をしている元教師という男(ビートたけし)。
イベント会場での店頭販売をするために、いつも全国へ出張している北海道の弁当屋(草なぎ剛)と
上司よりかなり年上で物静かな雰囲気のある彼の部下(佐藤浩市)。
漁師だった夫を海で亡くした後、平戸の港で娘と共に食堂屋を営んでいる女性(余貴美子)。
彼らが連れ合いに対して想う気持ちを聞いていく中で、倉島の心も少しずつ変化していきます。
そして、妻の手紙の真意を悟った時、倉島のこれからの人生が見えてきました。
テレビ番組で観た大滝秀治さんのシーンもあっさりとした一言だったのですけど、
それだけに、やっぱり演技の上手さを感じるワンシーンだなあと思いました。
観終った時、人を思い遣ることの強さと愛の深さをじんわりと感じた1本です。
監督:降旗康男 出演:高倉健 田中裕子 佐藤浩市 草なぎ剛 余貴美子 綾瀬はるか 三浦貴大 大滝秀治 長塚京三 ビートたけし
2012年 日本
(20121013)
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