井上荒野著の同名小説を行定勲監督が映画化した人間ドラマです。
原作は未読ですけど、これは人間関係が大変そうな映画だなあと予告編を観ながら思っていました。
予想以上にドロドロした人間関係と強烈な愛の姿に圧倒されるような作品でした。
つやの愛に囚われた人々が、誰も幸せそうに見えないところが不思議でした。
ひとりの女性にまつわる様々な愛と女性の姿を描いた物語です。
大島で暮らす松生(阿部寛)には病床に臥せっている妻がいました。
彼は毎日、坂道を自転車で登りながら、妻の居る病室へと通っています。
その姿はやせ細っていて、近所の人々はまるで妻に生気を吸い取られたようだと言うほどでした。
病床の妻・つやは、既にほとんど意識が無い状態で、医者もそろそろ先のことを相談したいと言っています。
でも、松生には、それよりも先にしなくてはならないことがありました。
それは男狂いで松生と結婚してからも多くの男性と関係を持っていたつやを
今でも愛しているはずの男たちに、つやが死ぬということを伝えることでした。
そして、少ない手がかりを元に、ひとりひとりと連絡を取り始めました。
それにしても、ドロドロですね~
つやを深く愛する松生も、過去につやを愛した男たちの周りにいる女性たちも、
なんだか報われないような愛に生きています。
どうも、つやという人は自分も愛に狂っていますけど、彼女に関わる人々も狂わしていくのかも知れません。
そんな壊れた男たちの愛に触れた女性たちは、どうにも報われない愛を体験し、
その愛をそれぞれの形で受け入れています。
自分の愛を大切にしたいと思うのは誰もが一緒のはずなのに、
女性たちの行動が様々なのは興味深かったです。
そして、彼女たちの愛の決着には何とも言えない痛みや強さ、そして未来を感じました。
誰もが不幸に思える物語なのに、笑顔で終わるのが面白かったです。
結局、愛の無い人生より、こんな形の愛でも愛のある人生の方がきっと生き甲斐があるのだろうなあと
しみじみと感じた1本です。
監督:行定勲 出演:阿部寛 小泉今日子 野波麻帆 風吹ジュン 真木よう子 忽那汐里 大竹しのぶ 羽場裕一 荻野目慶子 岸谷五朗 渡辺いっけい 永山絢斗 奥田瑛二 田畑智子
2012年 日本
(20130129)
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