どれほど多くの人の願いが込められていたのだろうかと胸が痛くなりました。
戦場のシーンから始まる物語です。
南北戦争が4年目に入り、リンカーン(ダニエル・デイ=ルイス )が再選されて間も無くの頃、
彼は奴隷解放のための法案を早く通さなくてはと必死に考えていました。
甚大な被害と膨大な死者を出した戦争も疲弊により終わりが近付いてくる気配を感じていたのです。
奴隷制度を巡っての戦争だったので、憲法修正により大義名分が無くなれば戦争も終結に向かいますが、
逆に、先に戦争が終わってしまったら、きっと憲法修正は見向きもされなくなってしまいます。
やはり白人にとっては奴隷がいたほうが都合がいいのです。
だから、何としても戦争が終わる前に、この1ヶ月で法案を可決させようと決心していました。
でも、上院は通っても下院を通すのは至難の技だと分かっていました。
反対派が多い上に、同じ共和党でも強硬過ぎて修正案くらいでは納得しない者もいたのです。
しかも、南軍からの和平交渉も本格化していて、実際の交渉が始まってしまうのは時間の問題でした。
そんな中、リンカーンはブレインの国務長官ウィリアム・スワード(デヴィッド・ストラザーン)と共に
票集めの行動を起こし始めました。
それにしても、出だしからスピルバーグですね。
噂に聞いた本人による解説もさることながら、戦場のシーンの痛々しいこと(T_T)
戦争の戦いの悲惨さをそのままスクリーンに映し出しているようで本当に圧倒されました。
また、リンカーンのの置かれた立場の厳しさや家族の辛さも観ていて痛かったです。
人々の希望を背負い、政治家たちには追い込まれ、妻や息子には責められます。
それも全ての根源は奴隷解放制度なのです。
終わりの方に、“1年前より10歳も老けた”というような台詞があるのですけど、
いつ眠っているのだろうと思うほど、リンカーンはいつでも仕事をしている人でした(-_-)
物語はそんなリンカーンの苦労を描いているのですけど、メインとなる政治的な駆け引きは面白かったです。
裏工作を担当するロビイストたちが登場して、反対派に働きかけ始めます。
そんな彼らが議員を引き込む方法が金銭ではないところがいいですよね。
そして、何と言っても最後にものを言ったのが、リンカーンのカリスマ性溢れる説得力というところが
またいいなあと思ってしまいました(^^ゞ
2/3の賛成という難しい試練を乗り越えて奴隷解放制度が出来たのは、
リンカーンという人の正義感溢れる純粋な言葉だったのだなとしみじみ思ってしまいました。
また、それくらい難しいからこそ、憲法なのかなとちょっと考えてしまいました。
帰り道、こういう人が現代にいたら、どんな憲法を考えるのだろうかと色々思いをめぐらせていた1本です。
監督:スティーヴン・スピルバーグ 出演:ダニエル・デイ=ルイス サリー・フィールド デヴィッド・ストラザーン ジョセフ・ゴードン=レヴィット ジェームズ・スペイダー ハル・ホルブルック トミー・リー・ジョーンズ
2012年 アメリカ 原題:LINCOLN
(20130514)
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公式サイトはこちらへ http://www.foxmovies.jp/lincoln-movie/