12年という歳月がとても愛おしい時間になっていきました。
6才の少年メイソン(エラー・コルトレーン)は」、お母さんのオリヴィア(パトリシア・アークエット)と
お姉さんのサマンサ(ローレライ・リンクレイター)との3人暮らし。
ちなみにお父さん(イーサン・ホーク)とは1年以上も会っていません。
離婚した後、アラスカへ行っているという話ですけど、そのまま音信普通になっていました。
今、付き合っている恋人と上手く行かなくなったお母さんは、女手一つで子供たちを育てるためには
大学へ入りなおしてキャリアアップしなくてはならないと考えました。
そして、お祖母さんの家とも近いヒューストンへと引越します。
サマンサは学校の友達と離れるのを嫌がりましたけど、
お母さんの意志は固くて、結局、これまでの世界とは別れることになりました。
大学で勉強を始めたお母さんは、間も無く心理学の教授と恋に落ちます。
立派な仕事を持つ新しい父と、メイソンたちと近い年頃の姉弟がいる大きな家での暮らしは
今までとは違って安定した日々をもたらしてくれました。
でも、教授は家では厳しい人で、家事の分担にもとても口煩く指示してきます。
やがて、お酒を飲む量が増えてきた教授は、飲むと不機嫌さが増して暴力的になり始めます。
はじめは我慢していたお母さんでしたけど、ついには自分の子供たち2人を連れて飛び出してしまいました。
それにしても、このお母さんはなかなか波乱の人生を歩んでいました~
母オリヴィアは17歳で妊娠してサマンサを産みますけど、相手の男は頼りなくて
結局、自分で生活を立てていくことになります。
そして、高卒で働く生活の厳しさを悟った後に、大学で学び直すために、子供たちを連れて引越。
その後も再婚と離婚を2回繰り返して、その度に引越をしています。
当然、子供たちはその度に振り回されて怒りますけど、同時に残していく者を心配するところが優しいです。
1度目の引越では、遠く離れているお父さんと連絡が取れなくなるのではと母に尋ね、
2度目の引越では、相手方の連れ子の姉弟が大丈夫だろうかと気にかけます。
そんな二人の質問に、オリヴィアもきちんと答えているところが良かったです。
そして、二人に自分の状況を教えながら懸命に生きようとしている姿を見せていて、
こうして真剣に生きようとし、二人に愛情を注いでいることが分かるからこそ、
子供たちもお母さんに付いて行くのだろうなと感じました。
そして何と言っても、メイソンの12年を体現していくエラー・コルトレーンの成長する姿に惹き付けられました。
6歳の可愛い少年が、ちょっとロン毛になって微妙に大きくなってきたなと思ったら、
15歳の誕生日を迎える頃には男っぽくなってきて、最後の大学生の時にはすっかり大人の顔になってきます。
もちろん、大学生といっても自立の第一歩ですけど、それまでの無邪気な顔を観ていたので
うわーっ大人になったなあと感じてしまいました。
また、彼らと共に生きてきたサマンサ役のローレライ・リンクレイターや、
時々遊びに連れて行ってくれて、男の人生の機微を伝えてくれるお父さん役のイーサン・ホーク、
そして、彼らを必死に育ててきたお母さんの役のパトリシア・アークエットらが
時代と共に変わっていく様子からも目が離せませんでした。
特に、大学入学のために家を出るメイソンを前にしたお母さんの姿には、
一緒になってほろりとしてしまいました。
メイソンをはじめとする一家のキャラクターをここまで撮り上げた監督さんは凄いと思いました。
観終った時、きっとこの後、何度でも観たくなる作品になるだろうなあと感じた1本です。
監督:リチャード・リンクレイター 出演:エラー・コルトレーン ローレライ・リンクレイター パトリシア・アークエット イーサン・ホーク
2014年 アメリカ 原題:BOYHOOD
(20141114)
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