The Wolfpack ～第12回ラテンビート映画祭より～

11月3日に横浜の桜木町でチャレンジして来たラテンビート映画祭の2本目は「The Wolfpack」です。

大人になるまでほとんどNYのロウアー・イーストサイドにあるアパートの外へ出ることの無かった
アングロ兄弟の現在を映し出したドキュメンタリーです。

その昔、彼らのお父さんは、一夫多妻制を宗教としたとある宗教家が自分の妻たちに
1人につき10人の子供を作って大家族となったことを羨み、自分の妻との間にも多くの子供を作りました。
10人とまでは行きませんでしたけど、7人の子供が産まれて9人家族となりました。

彼らの父母は今住んでいる地区の環境が悪いと感じ、子供たちを外へは出しませんでした。
ご近所付き合いも皆無です。
子供たちは年に9回ほど外出のあった年もありましたけど、1年に1度だけの年も、
そして全く外出無しの1年もありました。

子供たちの楽しみはDVDで映画を観ること＆楽しむことです。
彼ら自身も、もし映画鑑賞が無かったらこの生活に耐えられなかっただろうと言っていました。
ただ鑑賞するだけではなく、何度も観てはノートに台詞を書き起こしたり、主人公のキャラクターになりきって
兄弟たちと芝居を楽しんだりと、心底映画に浸れる時間が楽しかったようです。

そんな彼らの日常がゆっくりと変わっていきます。外の世界を知ったのです。
父の監視の目を逃れて外へ出た子供たちは、やがて自分たちの生活の不自然さを実感します。

カメラを回されている彼らの姿は、腰まである長髪から短めの髪へと変わっていきます。
そして、現在の父に対する心境を伝える子供たちからは、ようやく親の極端な束縛から解放されたという
素直な言葉と複雑な気持ちが語られていました。

その様子を見ながら、こんなに特殊な状況で育った人も逞しく育つものなのねと感じました。
観終わった時、何だか不思議な元気を貰ったような気分になった1本です。



監督：クリスタル・モーゼル　出演：アングロ兄弟
2015年　アメリカ　原題：The Wolfpack

→ラテンビート映画祭の公式ホームページはこちらへ　http://lbff.jp/film.html

（20151103）