リアルな青木ヶ原の情景にぞっとさせられました。
死ぬのに理想的な場所を探していたアーサー(マシュー・マコノヒー)はネットで青木ヶ原を見つけます。
早速、日本行きのチケットを取ると手荷物も持たずに飛行機へ乗り込みました。
電車とタクシーを乗り継いで樹海の入り口へ降り立った彼は、ためらい無く奥へと歩き始めました。
やがてアーサーは落ち着いて座っていられるような場所を見つけます。
そこに妻からの最後の郵送物を置いて座ると、睡眠薬を飲み始めました。
何錠か飲んだ時、出口を求めて彷徨っているタクミ(渡辺謙)の姿が彼の視界に入って来ました。
とても痛々しそうなタクミの様子に思わず声をかけたアーサーは、自分の歩いてきた方向を指差し
こちらに出口への道があると教えます。
よろめく男を先導するように出口へ向かおうとしたアーサーは、その道が無くなっていることに気付きます。
そして、二人は出口を求めて互いを支えながら彷徨い始めました。
それにしても、不思議な話でした。
妻を亡くしたアーサーは死に行く場所を樹海に求めます。彼にとっては樹海は安らぎの地なのです。
でも、そこで出会った傷だらけのタクミに、ここは煉獄だと教えられます。
その意味を考え、タクミを助けようとするうちに、アーサーは自分を取り戻していきます。
彼が何を感じた等の明確な台詞はあまりありません。観ている者が想像するだけです。
もしかしたら、数々の遺体に出会って死に夢など無いと悟ったのかも知れません。
自分が助けなくてはと思う人が傍に居たからかも知れません。
その辺りは後で想いを巡らすとして、とりあえず、苦しみながら出口を求めて死の世界を彷徨っていた彼が、
人生を改めて歩み始める力を取り戻したのを観ることが出来たことにほっとしました。
タクミの妻のちょっと変わった名前の意味が分かった時は思わずニッコリしてしまいました。
観終った時、これほど優しい気持ちになる映画だったとは意外だったなあと思った1本です。
監督:ガス・ヴァン・サント 出演:マシュー・マコノヒー 渡辺謙 ナオミ・ワッツ
2015年 アメリカ 原題:THE SEA OF TREES
(20160426)
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