きっと誰もが、どうしてこうなったのだろうと悩みながら生きていくのだなあと思いながら観ていました。
登場する家族は、1年前に夫を亡くして独りで団地暮らしになったお母さん（樹木希林）。
夫と二人の娘を持ち近所の和菓子屋で働く姉（小林聡美）。
15年前に小説の新人賞を獲ってから、ずっと未完の小説を書き続けながら探偵事務所で働いている良多（阿部寛）。
良多の元妻で小学生の息子・真悟（吉澤太陽）を独りで育てている響子（真木よう子）。
良太は賭け事が辞められない性格です。また金にならない小説を書き続けていることと言い
どうも安定した生活を送るには不向きな男のようです。
それが原因で妻には去られ、子供と会えるのは1ヶ月に一度の月5万円の養育費を渡す日だけになっています。
このところ、良太は金に困っていました。探偵事務所からの給料を手にしても競輪で失くしてしまい、
先月の未払分と合わせて10万円を用意できないのです。
何とか最後の頼みの綱である母に借りたいと思っているのに、口には出せません。
母の居ない時に家捜しをしても出てこず、姉にもその行為を疑われています。
そして、とうとう今月も養育費を渡す日が来てしまいました。
それにしても、「幸せは諦めないと手に入らないもの」と言う言葉は謎かけみたいですね。
でも、この作品を観ていると何となく解かる気がしてくるのが面白かったです。
自分の夢と欲望を抑えきれずに家庭を壊してしまった男。
彼は子供の頃になりたかった大人にはなれていません。
両親が離婚しても素直で大人しい息子を大切にしたいのに、良い父親にはなれないのです。
息子への愛も妻への愛も心にはあるのに、どうしても人生はそちらへ向かって行かないというのも哀しいです。
実はそんな良多は稼ぎが無くて借金を繰り返していた父親そっくりと言われています。
夫からそんな苦労を負わされ続けてきたお母さんは、自分のように我慢できずに良多と別れた妻の行為を
ちょっと拘りを持ちつつも、受け入れようとしています。
でも、受け入れる前にもう一度ダメなのか妻に訊いてしまいます。
その質問に答える妻の姿と答えを聞いたお母さんの姿が心に残りました。
俳優陣の演技は隅から隅までみなさん最高でした。
中でも樹木希林さんの演じたお母さんは本当に素晴らしかったです。
観終った時、自分の今までの人生を思わず振り返りたくなるなあと思ったのと同時に
これから自分はどんな大人になれるのだろうと考えてしまった1本です。
監督：是枝裕和 出演：阿部寛 真木よう子 小林聡美 リリー・フランキー 池松壮亮 吉澤太陽 橋爪功 樹木希林
2016年 日本
（20160521）
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