私の日々の楽しみのひとつ、通勤電車の中で読んだ文庫本の中で面白かった本の感想です。
今回の本は『ミ・ト・ン』です。
『ミ・ト・ン』 小川糸/文 幻冬舎文庫小川糸さんの本は時々読んでいます。
近いところでは『ツバキ文具店』の続編の『キラキラ共和国』です。
心に沁みるような物語に出会える作家さんだなと思っています。
この『ミ・ト・ン』はラトビア共和国をモデルにした物語です。
森と自然に囲まれた美しい村で生まれた少女マリカの人生を綴っています。
平澤まりこさんの版画も美しくて魅せられました。
この物語の国では、女性たちは誰もがミトンを編むという伝統を継承しています。
お祝いの時にも哀しみの時にも気持ちを伝えるのはミトンです。
女の子は幼い頃から家族や学校で編み物を習いながら育ちます。
でも、マリカは外で遊ぶのが大好きな活発的な子だったので、
じっと座って編み物をするのはとても苦手でした。
そんなマリカが恋をします。もちろん、恋をした相手に想いを伝えるのもミトンです。
マリカはどうして今までちゃんと編み方を覚えてこなかったのだろうと後悔しながらも、
必死に想いを込めてミトンを編みました。
その後、平和だった彼女の国が他国に占領され、辛い時を迎えます。
それでも、彼女が想いを込めて編んだミトンは
彼女と彼女のミトンに出会った人々に優しさと希望を与えていきます。
読んでいて、自分ではどうしようもない大きな力に翻弄されるマリカの人生が切なかったです。
そして、そんな時代に生きながらも幸せを感じながら生きたマリカの強さが心に残りました。
短い物語でしたけど、心を静かにして向き合いたくなるような作品でした。
出会えて本当に良かった~と感じた1冊です。
(20200311)