『菓子屋横丁月光荘 歌う家』 ほしおさなえ/著 ハルキ文庫先日、プラネタリウムの本を探していた時に目に留まった本です。
プラネタリウムとは全く関係ない物語なのですけど、なぜか気になったのは表紙の印象からでしょうか。
ほしおさなえさんは『活版印刷三日月堂』シリーズで出会ってから時々読んでいる作家さんです。
『活版印刷三日月堂』は川越を舞台に祖父の遺した小さな印刷所を引き継いだ弓子さんと
彼女を取り巻く川越の人々の物語です。
この本を読んで、活版印刷の魅力を初めて知りました(^^)
『菓子屋横丁月光荘 歌う家』は同じく川越を舞台に大学院生の遠野守人くんと
彼が出会う人々との交流を描いた『菓子屋横丁月光荘』シリーズの1巻目です。
守人くんは幼い頃に両親を事故で亡くし、父方の祖父から厳しい教育を受けて育ちました。
その祖父も彼が大学生の時に病気で亡くなり、その後は独りで暮らすというような
肉親の縁の薄い人生を送っています。
大学院へ進んだことで現在住んでいる亡き祖父の家にも居辛くなった時、大学の教授の紹介で
教授の知人が持つ川越の家に管理人として住むことになりました。
彼には秘密にしていることがあります。なぜか家の声が聞こえてしまうことがあるのです。
初めて聞こえたのは、まだ両親が生きていた頃、台風の夜に家が苦しそうなうめき声を聞いた時です。
それからも、どんな理由かは分かりませんけど、時々声の聞こえる家に出会うことがありました。
今回、紹介された家は川越の旧市街にある築七十年の家で、建築当時の状態に改築した商家です。
早速、教授に連れられてその家“月光荘”へ行くと、不思議なメロディーの声が響いてきました。
でも、落ち着く感じの家で守人くんは居心地の良さを感じます。
そして、日々の暮らしの中で少しずつ交流を深めていく守人くんと月光荘との不思議な会話が
優しくて興味深かったです。
彼が出会う川越の人々も魅力的でした。
中でも、どちらかというとコミュニケーションの苦手な守人くんを自然に明るい方へ導いてくれる
後輩“べんてんちゃん”がいいですね~
また『活版印刷三日月堂』シリーズにも登場した人々がちょこちょこ登場するのも楽しかったです。
守人くんが様々な人に出会ってどんなことを感じていくのか気になりながら読んでいました。
手元にある2巻目『浮草の灯』もすぐに読んでしまいそうです。
来月に発売予定の3巻目『文鳥の宿』が楽しみになった1冊です。
(20200520)