私の日々の楽しみのひとつ、通勤電車の中で読んだ文庫本の中で面白かった本の感想です。
10月は仕事が多忙になるので、つい読みやすい好きな本を本棚から持ち出して読んでしまってます。
ようやく積読になっていた新刊(ただし文庫本)を読み始めました。
今回は『雨降る森の犬』です。
『雨降る森の犬』 馳星周/著 集英社文庫バーニーズ・マウンテン・ドッグと共に成長していく中学生の少女・雨音と家族の物語です。
家族と言っても、彼女は本当の家族とは疎遠です。
父は亡くなり、母は若い恋人とアメリカへ行ってしまっています。
母についていくことを拒否した雨音は山岳写真家の伯父と蓼科高原で暮らすことになりました。
伯父の家には牡のバーニーズ・マウンテン・ドッグ、ワルテルがいました。
以前に飼っていた同じ犬種の牝、マリアは人懐っこい犬で雨音も大好きでした。
今度のワルテルは何故か男尊女卑で人間の女性が苦手。雨音に懐いてくれません。
でも、伯父が仕事で留守にするときは雨音がワルテルの世話係です。
雨音はワルテルのリードに引き摺られながら、必死に散歩へ連れ出しました。
雨音の心の成長と共にワルテルとの関係も少しずつ変わっていきます。
ワルテルに“子分”にされてしまった雨音は、ワルテルに認められようと心掛けるようになります。
真っ直ぐに見つめるワルテルの視線を受け止めていると、見つめられる方も感じるものがありますよね。
雨音とワルテルの絆が深まる様子に、いいなあと思ってしまいました。
無条件に家族を愛するワルテルの愛は本当にかけがえのないものだなと感じました。
読み終わった時、犬と共に生きる暮らしの豊かさがしみじみと伝わってきたなと思った1冊です。
(20201118)