最近読んだ本『ハロー・ワールド』

私の日々の楽しみのひとつ、通勤電車の中で読んだ文庫本の中で面白かった本の感想です。
今回は『ハロー・ワールド』です。

『ハロー・ワールド』　藤井太洋／著　講談社文庫

主人公が初心者向けのiPhone用アプリ講座で試しに作成した広告ブロッカーから広がっていく物語です。
（”ハロー・ワールド”はプログラムで一番初めに書かせる文字列だそうです。）

目次は
ハロー・ワールド
行き先は特異点
五色革命
巨象の肩に乗って
めぐみの雨が降る
解説　高橋征義
ロストバゲージ

IT企業に勤める文椎泰洋は自身を“何でも屋”と認識しながら日々の業務をこなしています。
海外の開発会社との折衝や新製品の立ち上げなどプログラミングと関わりない業務もこなしつつ
社内調整に加えて少しはプログラミングにも関わるなど、専門を持たないエンジニアでした。

そんな文椎はたまたま受けた初心者向けのiPhoneのプログラミング講座で出会った仲間と
不要なweb広告をブロックするアプリ<ブランケン>を販売し始めます。
彼がjava Scriptで開発、プログラミングの専門家が監修、もう一人が販売管理担当の3人のチームです。

<ブランケン>は海外販売向けに翻訳をして、現在は48言語対応、90カ国で売り出されていました。
広告ブロッカーはすでに高性能で安価な商品が発売中なので、
<ブランケン>の売上は毎週数千円がいいところでした。
しかし、ある週から突然に10万円以上の売上があがるようになります。
それも何故かある国の一部の地域で急激に売上が伸びていました。

急変の原因を探っていくうちに、彼らはとある陰謀を突き止めます。
現況を打開しなくてはと必死に悩んだ文椎は、無謀とも言える行動をとる決心をします。
その行動を選択した彼の思考がとても興味深かったです。

何か問題が起きた時、その問題をどのように解決するかでその人の真価が見えてくる気がします。
文椎はただ問題を片付けるのではなく、その問題に関わった人や影響を与える人たちのことも考えて
その人たちにとって一番いいと考える解決法を実行していきます。

そして、時には無謀かも知れないその行動の中心にあるのは、“インターネットの自由を守る”です。
その信念がぶれないからこそ、物語が進むにつれて彼の心も生活もどんどん自由になっていきます。
そんな姿はちょっと怖いけどやっぱり羨ましかったです。

読み終わった時、ITのことは全く分からないけど凄いものを読んだぞという気持ちになった1冊です。
（20210323）

ハロー・ワールド (講談社文庫)

• 作者: 藤井太洋
• 出版社/メーカー: 講談社
• 発売日: 2021/03/12
• メディア: Kindle版