一つの大きな決心が彼女の人生を変えていきました。

初老で長年主婦をしてきたマギーはロンドン郊外の小さな村で静かに住んでいた。
しかし、幼い孫が難病にかかってしまう。
家を手放し必死に治療を支援して何年も経った今、とうとう孫の体力に限界が近づいていた。
そんなある日、良い治療法が見つかったと医者から言われる。
喜んだのも束の間、その治療が出来る病院の場所はなんとオーストラリアだ。
治療費以外の渡航費や宿泊費は本人負担になるが、マギーにも息子夫婦にもそんな大金はなかった。
マギーは治療費のために銀行へローンを頼みに行くが、収入も担保もないために断られる。
就職斡旋所へも行くが、技術も資格も無くその歳では…と断られる。
当ても無く街を歩いていると、ふと“接客係 高給”の張り紙が眼に入った。
何も考えることなく入ったその店は、なんと風俗店だった…

悪い言葉を口にすることもできないような普通の主婦マギー。
若くない彼女が支配人に見初められたのは、やわらかくて触り心地の良い手のひらでした。

彼女は壁越しにその手を使って、嫌々ながらも孫のために仕事を始めます。
でも、仕事をこなした分、給料は確実に上がってきます。
仕事着を作り仕事部屋を整えてやる気を出すにつれ、客の評判も上がっていきます。
そして、彼女の手の前には行列が出来るようになっていました。

また、マギーと支配人との短い会話の数々は、なんとも可愛かったです。
ぶっきらぼうで笑顔を見せない支配人と自分に自信の無いマギー。
二人は不器用ながらも互いに少しずつ歩み寄っていきました。

もちろん彼女の職業は、家族や友人たちには歓迎されるものではありません。
詮索好きな友人たちを避け、心配する息子には何をしているか言わないと宣言します。
でも、そんな障害も心に生まれた密かな自信と想いが乗り越える力を与え、
彼女を少しずつ変えていきました。

観終わった時、心がちょっぴり温かくなった1本です。

監督:サム・ガルバルスキ 出演:マリアンヌ・フェイスフル ミキ・マノイロヴィッチ
2006年製作 イギリス/フランス/ベルギー/ドイツ/ルクセンブルク 原題:IRINA PALM
(20071126)