人生を終えようとしている一人の女性の心の旅を描いた作品です。
病で臥せている主人公が人生に想いを馳せながら紡ぎだす言葉に、心が満たされるような物語でした。

最近めっきり身体の弱っている老婦人アン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)は
床に就いたまま意識が戻ることも少なくなっていた。
時折、意識が混濁しては娘たちの知らない男の名を呼んでいる。
姉のコンスタンス(ナターシャ・リチャードソン)は母を傷つけないようそっとして置くようにと言うが、
妹のニナ(トニ・コレット)は母の言葉が気になって仕方ない。
そんな中、現実と夢の世界を行き来していた母の意識は名前の主・ハリスと出合った時代へと遡っていた…

過去と現実の時の中で、母と娘たちの想いと哀しみ、そして希望が映し出されていました。

歌手になる希望に輝いていた若き日のアン(クレア・デインズ)。
アンの親友で、振り向いてもらえない恋を諦めて別の人との結婚を選んだライラ(メイミー・ガマー)。
ライラの弟でアンのことを密かに想い続けていたバディ(ヒュー・ダンシー)。
ライラが子供の頃からずっと恋しく思っていたハリス(パトリック・ウィルソン)。
ライラの結婚式で出会ったアンとハリスは一目で恋に落ちますが、
同時に哀しい事故が起きてしまいます。
お互いに愛し合っていたのに別れざるを得なかった運命の中で
アンはハリスに心を残したまま生きていくことになります。

その後に経験する結婚の失敗や子育てと仕事との両立の難しさの中で
アンは「あの時、ハリスと船で旅立っていたら…」という思いに囚われていきます。
彼女にとってハリスとは、一種の幸せな夢への名残だったのかも知れません。
そして、妹のニナはそんな母の思いを敏感に感じ取っていきます。

母の思いに胸を痛めつつも、実はニナ自身も人生の分岐点に立っています。
決断に悩み、将来への不安に心がつぶされそうになっています。
でも、ニナは笑顔と共に向けられた母の言葉と母の長年の親友であるライラの言葉に
勇気付けられ、大きな人生の一歩を進む決断をしました。

それにしても綺麗な作品でした~
幻想的な映像も、女優さんたちの演技や表情も
そしてひとつひとつの台詞もみんな輝きを放っているように感じられました。
そして観ているうちに、心がすっと軽くなるように癒されていきました(^^)

う~ん、これは原作も読んでみたいなあとしみじみ思ってしまった1本です。



監督:ラホス・コルタイ 出演:クレア・デインズ トニ・コレット ヴァネッサ・レッドグレーヴ
2007年製作 アメリカ 原題:EVENING