美しい映像の繰り広げるストーリーの行末はちょっと不思議でした。
最後になって“落下”の意味がようやくわかりました☆

1915年。右腕を骨折して入院している少女アレクサンドリア(カティンカ・ウンタール)は
退屈しのぎに病院内を散策していた。
ふと、彼女は若い男・ロイ(リー・ペイス)がベッドに横たわっているのを見つける。
彼は映画界で活躍するスタントマンだったが、撮影中に重傷を負い入院していた。
怪我は非常に重く、ベッドから起き上がることも出来ない様子だ。
アレクサンドリアを見つけたロイは、面白い話を聞かせるといって少女を引き寄せた。
そして、架空の国を舞台にした不思議な冒険物語を聞かせ始めた…

まるで千夜一夜物語を聞いているような冒険物語は楽しかったです。

青年が少女を引き付けるために始めた物語。
それは少女の心を映し出すように、勇者たちの冒険と正義の戦いの物語になっています。
悪と闘う勇者たちは強いヒーローたちです。
そんな彼らの活躍に少女はワクワクしながら聞き入ります。
現実では寝たきりの青年も物語の中では強い勇者を演じていて、生き生きと飛び回っていました。

物語の続きを聞きたくて、少女は青年の命令に従おうとします。
実は現実に絶望していた青年は自殺を図るために薬を手に入れようとしていたのです。
でも、まだ5歳の少女には難しい行動は出来ません。
言われたことを一生懸命に行なおうと思っても上手く出来ないのです。
少女の失敗が続き、物語は青年の心の絶望を映し出すようになっていきます。
青年の繰り出す物語の映像の美しさに魅了されながら観ていたので、
勇者たちの行末に泣き叫ぶ少女と一緒に、悲しくなりながら展開を見つめていました。

それにしても青年の物語を彩る映像の数々は本当に美しかったです。
この世のものでは無いような広大で不思議な風景。
勇者たちを包む豪華で鮮やかな衣装の数々。
妖精の存在を感じるようなファンタジーの世界は、本当に夢の世界のようで楽しかったです。

少女の心に鼓舞されるように物語の勇者も戦いに挑んでいきます。
そんな青年の分身とも言える勇者の活躍ぶりに嬉しくなると共に
最後にこの時代のスタントがどれほどの過酷な現場だったかを知ってドキドキさせられた1本です。



監督:ターセム・シン・ダンドワール 出演:リー・ペイス カティンカ・ウンタルー ジャスティン・ワデル ダニエル・カルタジローン
2006年 アメリカ 原題:THE FALL
(20081003)