庭で絨毯を作るための糸を染色していたダーリャは、ふと聞こえてきたセタールの音色に瞳を輝かせた。
ダーリャの大好きなハムーン(メヘラン・ゴルモハンマドザーデ)が奏で始めた音だった。
ダーリャは渋い顔をする母に断って屋上へ糸を干しに向かった。
そして、嬉しそうに鏡を光らせ、隣の家の屋上でセタールを鳴らしていたハムーンに合図を送った。
そんな楽しいひと時も束の間、帰宅した兄が目敏く妹の行為を見つけ、鬼気迫る表情で怒り出した。
結婚は親が決めるものというこの土地で、16歳の二人のあからさまな行為は
近所の笑いものになっていたのだ。
ダーリャは美しいため、結婚の申し込みが次々と舞い込んでいた。
今のところダーリャの母はまだ子供だからと断っていたが、ハムーンは気が気でない。
とうとうハムーンは自分を認めてもらうために町へ働きに出ることにした…
過酷な砂漠の砂嵐と光の強さは迫力でした~
隣に住むいとこ同士で幼い頃から惹かれ合っていたハムーンとダーリャ。
でも、音楽の才能はありますが資産の全く無いハムーンはダーリャの相手として認めてもらえません。
16歳になり結婚という現実が見えて来た時、ハムーンは叔父を頼って町へ向かいます。
懸命に働くハムーンは叔父から娘婿にと見初められますが、ハムーンの心はダーリャの元にあります。
居辛くなったハムーンが実家へ戻ってくると、ダーリャは不治の病に罹っていました。
祈祷師によると病を治すには砂漠の向こうの遠い湖にいる小さな黒い魚を食べさせること。
それを聞いたハムーンは必ず戻ると心に決めて旅立ちました。
それにしても恋愛や結婚が自由にならないというのは改めて考えると厳しい世界ですね(T_T)
そう思えるのは、自由な現代に生まれたからこそ感じる厳しさかも知れませんけれど(^_^.)
不在の父の代わりに一家の大黒柱となっている兄が妹へ見せた激しさと厳しさにはビックリでした。
でも、兄の厳しさは女性が自由に生きられなかった時代によく見られたものですよね。
そう思うと、生まれた国によって生き方を選べないことの辛さを感じました。
一方、ハムーンの見せた強さはかっこ良かったです。
ダーリャの兄が馬と駱駝で仲間たちと向かうのを尻目に、彼はひとり徒歩で砂漠へ向かいます。
その命を賭けた懸命な姿には、これまでどちらかというと冴えない雰囲気だったハムーンを
一気にダーリャの王子様として認識させてくれました(^^)
物語の結末には、なるほどなあと思うところはあるのですけど、ちょっと考えさせられました。
過酷な砂漠の旅の厳しさと、恋に一途な二人の姿がとても印象に残った1本です。
監督:エブラヒム・フルゼシュ 出演:メヘラン・ゴルモハンマドザーデ マハブーベ・シャーケリ ミラ・ハタミ
2008年 イラン
(20090927)