不法滞在者たちの働く工場に一斉捜索の手が入った。
逃げ惑う大勢の不法就労者たちを探す中で、捜査官マックス(ハリソン・フォード)は
一人の若い女性ミレヤ(アリシー・ブラガ)が物陰に隠れているのを見つける。
子供がいるのと懇願するミレヤの姿に見逃そうかという迷いも起きたが、
その迷いを若い捜査官仲間に指摘されて結局は逮捕する。
移送車に乗り込む間、彼女は涙ながらに幼い子供を預けている部屋の住所をメモしてマックスに渡すが
それも仲間に目撃されたため、マックスは彼女の観ている前で捨ててしまった。
一日の仕事が終わって帰宅した後、ミレヤが気になって仕方なかったマックスは
彼女の移送された拘置所へ連絡を入れ、様子を問い合わせた。
だが、彼女は既に強制送還させられた後だった…
観終わった時、“自由の国”は遠い夢になってしまったのだなあとため息が出ました(T_T)
一人で息子を育てるために、メキシコから働きに出てきたミレヤ。
彼女はアメリカに取り残された息子が心配で、再び不法入国を試みます。
女優になる夢を見ているオーストラリア出身のクレア(アリス・イヴ)。
彼女はグリーンカードを発行できる役所の男コール(レイ・リオッタ)と偶然に出会い、
カードと引き換えに理不尽な強要をされてしまいます。
歌手として活躍していくためにグリーンカードを必要としたギャヴィン(ジム・スタージェス)は、
不慣れなヘブライ語を覚えてラビの真似をしようとします。
3歳の時からアメリカで暮らしてきた少女タズリマ(サマー・ビシル)はハイスクールの授業で
911事件の犯人たちが行動した意味を考えようという意見を発表して人生を大きく変えてしまいます。
自由な発言を保障されていると信じていたタズリマは自分の身に起きた状況に呆然とします。
韓国出身の高校生ヨン(ジャスティン・チョン)は悪い仲間たちに誘われ、
アメリカ国籍を取得する宣誓式の前日に強盗殺人事件へ巻き込まれてしまいます。
そして、マックスの相棒でイラン出身のハミード(クリフ・カーティス)は
家族の中で唯一アメリカ生まれで、家族に馴染めなくなっていた妹を殺人事件で亡くします。
アメリカ流の自由の中で生きて来た妹は、ハミードや彼の父の知るイスラムの家風の中では
もう生きて行けなくなっていました。
そんなアメリカで生きて行きたいと願う人々を取り締まる移民局の捜査官マックスや
不法滞在者を理不尽な状況から救おうと奔走する弁護士デニス(アシュレイ・ジャッド)は
自分たちの力の無さを実感しながらも、自分の良心に従って行動しようと試みます。
彼らのような現場の人間たちの良心だけが不法滞在者の救いになっているような今、
国として閉ざされた状況の中で起きるそれぞれの出来事にはとても考えさせられました。
そして、マックスやデニスの力は大きな流れの中では本当に小さい光でしかないと感じました。
『扉をたたく人』とはまた違った雰囲気で描かれた不法滞在者の現実に
アメリカの変化の大きさと911事件の影響の大きさを改めて実感させられた1本です。
監督:ウェイン・クラマー 出演:ハリソン・フォード クリフ・カーティス アリス・イヴ レイ・リオッタ アリシー・ブラガ サマー・ビシル ジム・スタージェス
2009年 アメリカ 原題:CROSSING OVER
(20091004)