人が行き交う駅の喫茶店でジュリエット(クリスティン・スコット・トーマス)は一人時間を潰していた。
彼女は化粧もせず時代遅れの服に身を包み、大きなバックを持ってとても疲れた表情をしていた。
そこへ車で乗り付けて駆け込んできた若い女性と目が合うと、ようやく微笑を浮かべる。
若い女性はジュリエットの妹レア(エルザ・ジルベルスタイン)だった。
親しげに抱擁して挨拶すると、二人は車でレアの家に向かった。
だが、笑顔のレアの隣に座るジュリエットの表情はどことなく硬いように見える。
実はジュリエットは15年ぶりに刑務所から出てきたところで、
しばらく妹の家に身を寄せるために妹を訪ねてきたのだった…
事件をきっかけに両親や夫に見放され、心を閉ざしてしまったジュリエット。
そんな姉ジュリエットを15年間ずっと想い続けた妹レア。
長い刑期を終えた一人の女性の再生を通して、肉親の愛とは何かを考えさせられました。
出所後、ジュリエットは様々な人に出会い、世間の視線を受けていきます。
彼女の罪を知って忌み嫌う人。彼は彼女に出て行けと言い放ちます。
彼女の無愛想な態度に難色を示す人。彼は彼女に同僚と仲良くするように努力してと言う反面、
彼女の視線をまっ直ぐに受け止めることが出来ません。
彼女に関心を寄せつつも、未来への絶望感から死に向かっていく人。彼は過去に囚われて
未来を作ることが出来ません。
想い出に囚われてしまったからこそ愛を喪った辛さに耐えられず生きられなくなってしまったのです。
そして、彼女の過去を知っても彼女への態度を変えずにそっと寄り添ってくれる人々。
彼らは彼女の心の痛みを少しずつ開放していきました。
ジュリエット自身は想い出があったからこそ愛を信じて生きることが出来ました。
歳の離れた姉妹の二人の間には、幼い頃から仲の良かったという優しい想い出があります。
長い月日を経ても、その想い出が色褪せることはありませんでした。
妹の同僚がジュリエットに言う“受刑者と自分は良く似ている。彼らとの間に大きな違いは無い。
もしかしたら自分もあちら側にいたかも知れない。“という台詞が印象的でした。
もちろん悪に染まって相容れない人もいるのかも知れませんけど、全てがそういう人ではなく、
受刑者もそうでない人も、結局は同じ人間なのだということを改めて考えさせられました。
そして、ふとしたきっかけや運命で人生というものは大きく変わってしまうのだなあと
ちょっと怖さを感じました。
ジュリエットがようやくレアに心を開いた時、ようやく本当に二人の心が結ばれた気がしました。
エンドロールを眺めながら、心が温かくなったのを感じた1本です。
監督:フィリップ・クローデル 出演:クリスティン・スコット・トーマス エルザ・ジルベルスタイン セルジュ・アザナヴィシウス フレデリック・ピエロ
2008年 フランス/ドイツ 原題:IL Y A LONGTEMPS QUE JE T'AIME/I'VE LOVED YOU SO LONG
(20091215)
追伸
この映画は試写会で観ました。公開は12月26日以降の予定です。