父は失踪し、母はドラッグ中毒。幼い頃に養育不可能な母と引き離され、
施設や知り合いの家を転々としながら生きて来た少年マイケル(クィントン・アーロン)。
彼は出生届も出されず、明確な誕生日も知らずに生きてきた。
今、お世話になっている家には同い年の少年がいて、ハイスクールへの入学を希望していた。
その少年の父は自分の息子と共にマイケルのことも推薦をしてくれた。
少年たちの運動能力に目を留めたアメフト部のコーチは、強力な推薦をして二人を入学させる。
だが、ほとんど学校へ行っていなかったマイケルは授業について行けず無言の日々を過ごしていた。
大きな身体を支えるために食費もかかることから、次第にお世話になっている家に居辛くなったマイケルは
その家を出て学校の体育館で眠るような生活を送り始めていた。
そんな冬の夜に、彼がシャツ一枚で体育館へ向かって歩いていたところ、テューイ一家に出会った…
マイケルの仕草ひとつひとつに忘れていた何かを思い出して、心が温かくなりました。
大きな身体に敏捷な運動神経を持つマイケル。
ボール競技なら何でもOKという彼は運命に導かれるようにアメフトの世界へと入っていきます。
でも、そこまでの道のりは想像もつかないほど厳しいです。
富裕層のテューイ一家と出会うまでのマイケルは食べ物を拾ってはポケットに入れ、
コインランドリーで一晩を過ごすような生活を送ってきました。
彼のIQは低く、勉強もろくにしていなかったため、どう勉強して良いかも分からないほど。
いつも静かな瞳で無表情に見つめる彼には未来も希望もありませんでした。
そんな彼が唯一飛びぬけていたのは運動能力と家族を守ろうとする保護能力。
マイケルは生い立ちや環境からは考えられないほど、奇跡のように優しい心を持っていたのです。
リー・アン・テューイ(サンドラ・ブロック)は夜道で出会ったマイケルを放って置けずに一晩家へ泊めます。
見知らぬ黒人の少年を家に泊める彼女の不安を払拭するように
翌朝、きちんとシーツを畳んでそっと家を出ようとしたマイケル。
その姿を見てリー・アンは彼のために何が出来るのかと考え始めます。
そして、マイケルの純粋な心に触れた時、
彼女は彼からかけがえの無いものを与えられている自分を感じ始めました。
それにしても、この物語が実話というのが凄いですね。
しかもマイケルがプロになるのは2009年。つい去年のことなのです。
純粋な心を持ち続けた奇跡。そして偶然にリー・アン・テューイと出会った奇跡が
マイケルの未来を変えたのだなあとしみじみと思いました。
ラストに出てくる本人たちの笑顔を見ながら、
逆境にも負けなかったマイケルの心に拍手を贈りたくなった1本です。
監督:ジョン・リー・ハンコック 出演:サンドラ・ブロック ティム・マッグロウ クィントン・アーロン ジェイ・ヘッド リリー・コリンズ キャシー・ベイツ
2009年 アメリカ 原題:THE BLIND SIDE
(20100303)