グレゴワール・カンヴェル(ルイ=ド・ドゥ・ランクザン)はインディーズ系の映画会社を切り回すために
いつも時間とお金に追い立てられていた。
それでも映画を愛する彼は、良い脚本を持ち込む監督を見つけては力になろうと頑張っていた。
だが、良い映画を創っても売れる映画になるとは限らない。
いつもギリギリの線で動いていた会社の経営は、現在撮影している映画の製作費がかさんだため、
グレゴワールにはどうにもならないところまで追い込まれてしまう。
全ての手を打ちつくした絶望に陥った彼は、自分に向けてピストルを発射した…
映画に対する愛と経営のバランスの難しさが観ていて切なかったです(T_T)
実在した映画プロデューサーをモデルに創り上げた物語です。
フランス映画祭で観た時、見応えはあったけど書くのが難しいなあと悩んでいました。
もしかしたら、かなりネタバレになってしまうかも知れませんm(__)m
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主人公のグレゴワールは映画を愛して良質な作品を送り出してきました。
カリスマ性を持っていて信頼があり、一緒に働いているスタッフたちにも慕われています。
でも、時代の流れなのか配給しても興行は良くなく、資金繰りは悪化する一方です。
最後まで駆け回りましたがどうにもならず、悩んだ挙句にとうとう自殺をしてしまいます。
この自殺のシーンが特別に強調するのではなく一つの流れのように描かれていて、
心構えが無いまま観ていた私には結構ショックでした(T_T)
その後、会社を任された妻シルヴィア(キアラ・カゼッリ)が夫グレゴワールに代わって奔走します。
元々、シルヴィアはいつも仕事人間の夫には不満を持っていました。
でも、グレゴワールが亡くなると、自分と娘3人を残して逝ってしまった夫の遺志を継ごうと動くのです。
シルヴィアはグレゴワールが手がけた映画を守るため、
そして製作中の映画を守るために、債権会社や監督に掛け合おうとします。
でも、相手の事情もあり上手く都合が付きません。観ていてとても歯痒かったです。
特に、グレゴワールを死に追いやった原因となった映画の監督が融通のきかない人で、
気持ちは分かるけど、う~ん…と思いながら観ていました(^_^;)
興味深かったのは、その後に物語が娘の視点になったことです。
グレゴワールには3人の娘がいます。下の二人は幼くて父の死もよく理解できない年頃ですけど、
一番上の娘クレマンス(アリス・ド・ランクザン)は父の死後に仕事やその大変さを理解しようとします。
その姿が淡々と、でも寄り添うような視線で描かれていました。
思春期の難しい年頃だったクレマンスは忙しい父とは距離を置いていたところもあったので、
もしかしたら父への態度に後悔が残ったのかも知れないなあと思ったりもしました。
彼女が心の中でどう折り合いをつけたのかは、はっきりと答えがある訳ではありません。
ただ、彼女は父の愛した映画を見つめながら、静かに現実を受け止めたように感じました。
一人の男の死と家族の想いを飲み込んで、会社は終了します。
でも、グレゴワールが手がけた作品は彼の会社名と共に残りました。
それだけがグレゴワールの頑張った証になってしまったのだなあと思うのと同時に、
でも、せめて彼の家族がその仕事を誇りに思ってくれて良かったと感じた1本です。
監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ 出演:ルイ=ドー・ド・ランクザン キアラ・カゼッリ エリック・エルモスニーノ アリス・ド・ランクザン
2009年 フランス 原題:LE PERE DE MES ENFANTS/THE FATHER OF MY CHILDREN
(20100321)
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公式サイトはこちらへ追伸
この映画はフランス映画祭で観ました。公開は5月29日以降の予定です。