アウトレイジ

カンヌ映画祭でも話題になった北野武監督の最新作です。
実は北野監督作品は『Dolls ドールズ』と『座頭市』しか観たことがありません。
バイオレンスが苦手なのでスルーしていたのですけど、今回はチャレンジしてみました(^^ゞ

山王会の直参である池元組組長の池元（國村隼）は、兄弟の契りをしている村瀬組のことで
若頭の加藤（三浦友和）から山王会組長の関内（北村総一朗）が怒っていると聞かされる。
関内のご機嫌を取るには村瀬組にダメージを与えるしかない。
だが、自分の手を汚したくない池元は、配下である大友組組長の大友（ビートたけし）に
村瀬組を痛めつけるように指示を出す。
兄弟分の組を傷つけて良いのかと問う大友に、池元は本家の指示だから仕方ないだろうとかわした。
大友組は村瀬組の若者を罠にかけ、村瀬組若頭の木村（中野英雄）を酷く痛めつけた。
その復讐に、罠に関わった組員を瀕死の状態にされた大友組は
今度は村瀬組組員の飯塚（塚本高史）を射殺する。
そんな最中、池元から電話が入った。
その指示は村瀬組組長の村瀬（石橋蓮司）を痛めつけて引退に追い込めというものだった…

まるで戦国時代のようだなあと思ってしまいました。

裏社会における裏切りと下克上を描いた作品です。
本部→直参→手下と、組とは言ってもそれぞれ格付けされています。
その上下関係は厳しいです。上から指示されれば、その通りに動かなければなりません。
頂点から指示されたらなおさら信じざるを得ないのです。
そして頂点の思惑通りに闘争が起き、気に入られなかった下の者たちは滅びていきます。

そんな上下関係とは別に、金のあるところに吸い付くように近付く警察の姿も描かれています。
マル暴担当の刑事・片岡（小日向文世）は大友からも山王会本家からも金を貰い情報を流しています。
時には双方から金を貰っているのに、大友の分が悪くなると見殺しにするように去って行ったりします。
その姿はとてもズルくて嫌な人間の面を映し出していました(^_^;)

それにしても全員が本当に悪人でした～　人を傷つけることなど何にも気になりません。
でも、そんな悪人にもいろいろな種類がいるのが興味深かったです。

平気で嘘をつき、自分を信じる者たちを裏切りながら嘲笑う本家組長・関内。
組長の意を汲むように動き、でも裏で何を考えているのか見えない本家若頭・加藤。
本家組長・関内の意に沿うためには簡単に仁義を無視する池元組組長。
そんな池元組組長に怒りを覚えつつも、仁義を立てて指令どおりに動いていく大友組組長。
また、大友自身は情に厚い人物ですけど、その縮図は大友組の中にもあります。
組長を心から信頼している大友組若頭の水野（椎名桔平）と
何か裏のありそうな大友組組員の石原（加瀬亮）も対照的な運命を歩むことになりました。

それにしても、みんな迫力がありました～
演技の達者な役者たちが悪そうな笑顔を見せると、本当に怖いです。
そんな彼らが突然出してくるハードな暴力シーンには思わず目を伏せてしまいました。
特に組員や情婦を徹底的に殺していくのには参った～と思いました(-_-;)
でも、彼らがテンポ良く言い合いをしているシーンは、ドキドキしながらもちょっと笑わされました。
そしてバタバタと死んでいく展開に、うわ～と唸ってしまいました(^_^;)

仁義を立てる人ほど哀しい運命になるのが切なかったです。
どんなに強くても人情に厚くても、死ぬ時にはあっけなく殺されてしまうものだなあと
しみじみ思ってしまいました。
どうしてもエンターテイメントとして観ることが出来なくて、
観終った時、何か割り切れないものが心に残った1本です。



監督：北野武　出演：ビートたけし　椎名桔平　國村隼　三浦友和　石橋蓮司　小日向文世　北村総一朗　加瀬亮　中野英雄
2010年　日本
（20100609）

→公式サイトはこちらへ

追伸
この映画は試写会で観ました。公開は6月12日以降の予定です。