心の痛みはゆっくりと夫婦の心に溶けていきました。
ピューリッツァー賞受賞の戯曲を基に映画化した人間ドラマです。
ベッカ(ニコール・キッドマン)とハウイー(アーロン・エッカート)は郊外の住宅地に住んでいる
幸せな夫婦でしたけど、そんな彼らの突然の悲劇が襲います。
犬を追いかけて道路へ飛び出した息子が車に轢かれて死んでしまったのです。
息子が突然に飛び出したので、車を運転していた高校生には罪はありません。
誰も恨むことが出来ないまま、全ての感情を胸に秘めてベッカは日々を過ごしていました。
でも、子供を失った怒りや悲しみはどこにも消えることはありません。
それは平静でいようとすればするほど、彼女を歪めていきます。
感情的になって人を受け入れず、攻撃的になって周りの人の気持ちを傷付けていきます。
そんな行動を彼女自身もどうにも止めることが出来ません。
そんな時、彼女は息子を轢いた高校生の姿を偶然に見かけました…
それにしても、胸に残る作品でした。
平静を装いながらも息子の面影に悩み、思い出すものを全て片付けようとするベッカ。
息子のビデオを毎晩見ては悲しみながらも、その思い出と共に生きていこうとするハウイー。
二人の心はすれ違いながらも、それぞれに何とか悲しみを乗り越えようとします。
その姿がリアルで、静かにひたひたと彼らの感情が伝わって来ました。
また悩みながらも彼らと話をしていこうとするベッカの家族や事故を起こした高校生の姿には
答えの無い行動の難しさを痛感させました。
そして、そんな周りの人々の姿に、それでも何とかしたいと思っている気持ちは
相手に伝わっていくものだという希望を感じさせました。
以前、ベッカの兄を亡くした経験を持つベッカの母ナット(ダイアン・ウィースト)の言葉が心に残りました。
その言葉を素直に受け止められたベッカを観た時、ああ彼女はもう大丈夫だなと感じました。
いつかこの夫婦に再び幸せなときが訪れますようにと願って止まなかった1本です。
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル 出演:ニコール・キッドマン アーロン・エッカート ダイアン・ウィースト サンドラ・オー タミー・ブランチャード マイルズ・テラー
2010年 アメリカ 原題:RABBIT HOLE
(20111125)
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公式サイトはこちらへ http://www.rabbit-hole.jp/