1930年代のドイツではヒトラーが台頭し始め、次第にユダヤ人への迫害が酷さを増していた。
そんなある日、大学教授のジョン・ハルダー(ヴィゴ・モーテンセン)の元にナチスから呼び出しが来る。
ナチスに入党していない彼は何事かと不安になりながらも迎えの車に乗り込んだが、
対応した将校の話は、彼の小説を気に入った総統の依頼で論文を書けというものだった。
ほっとしながら依頼を受けたハルダーは事の成り行きに喜びながら家へ帰ったところ、
家では認知症で寝たきりの母の叫び声と、その叫び声を聞きたくないために
ピアノ演奏に没頭する音楽家の妻のピアノの音が待ちうけていた。
二階に居る母に対応しながら家事の苦手な妻と子供たちのために1階のキッチンで料理をするジョン。
そんな時に限って訪ねて来る大学学長の義父はジョンに、
今後も大学で仕事を続けたければナチスへ入党しろと強行に言い始めた…
災いを避けるように生きてきた主人公の行く末は、直視に耐えられないような現実でした。
時代に流されていく一人の教授の人生を描いた人間ドラマです。
主人公のジョン・ハルダーは文学部の教授で、どちらかと言えばナチスの現体制に違和感を覚えています。
でも、彼には内心では嫌だと思っていても、つい流されてしまうような気の弱さがありました。
いつの間にかナチスに入党し、親衛隊へと変わっていきます。
また、家庭内のストレスに耐え切れず、自分を慕ってきた教え子と結ばれてしまい、
妻や子どもたちと別れて教え子と再婚します。
そんな彼には若い頃からの親友でモーリス(ジェイソン・アイザックス)というユダヤ人がいました。
モーリスは自分を取り巻く世界が変わっていることを肌で感じています。
そして、親友のジョンが次第にナチス親衛隊へと変わっていくのを苦々しく思っています。
それでも、ジョンしか頼る人がいなくなったモーリスはジョンに国外脱出の手配を頼もうとします。
でも、ジョンは気の弱さから、どうしてモーリスの手助けをすることが出来ませんでした(>_<)
それにしても静かなのにじわじわと怖くなる作品でした。
主人公は無意識に自己意識を保護しているようです。
一歩、ナチスへと進むたびに、彼は美しい音楽の幻覚を感じます。
その音楽に聞き惚れているうちに、彼は自分の現実から逃避しています。
そして、ふと我に返った時、彼は現実ではナチスの深みに落ちているのです。
そのギャップがとても不気味でした。
彼が現実と対面するラストはゾッとさせられる光景でした。
世界を覆っていく狂気はこうして人々を巻き込んでいくのかと改めて感じた1本です。
監督:ヴィセンテ・アモリン 出演:ヴィゴ・モーテンセン ジェイソン・アイザックス ジョディ・ウィッテカー アナスタシア・ヒル ジェマ・ジョーンズ スティーヴン・マッキントッシュ
2008年 イギリス/ドイツ 原題:GOOD
(20120109)
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