自転車を漕いで去る少年の姿を祈るように見つめていました。
12歳の少年シリル(トマス・ドレ)をめぐる物語です。
彼は1ヶ月という約束で父親(ジェレミー・レニエ)から施設に預けられました。
母親の居ないシリルにとっては父親が唯一の保護者です。
でも、突然に父親は引越してしまいます。施設にもシリルにも連絡がないままです。
彼は通じなくなった家の電話に何度もかけ、小学校を抜け出しては家のあった団地に行き
どうにかして父に会おうとしました。
そんな騒ぎの中でシリルはサマンサ(セシル・ドゥ・フランス)と出会います。
シリルが学校の先生に抵抗していた時に、必死にしがみついた女性です。
彼女は通りすがりの出会いだったシリルの境遇を気にして、
彼の父親が売り払ってしまった彼の大切な自転車を探し出した上に、シリルに届けてあげます。
自分の自転車に乗って得意になるシリルの喜ぶ姿を見て笑顔で去ろうとした彼女は
シリルから「週末だけの里親になって」と声をかけられました。
それにしても心が痛くなるような物語でした。
何と言っても父親がひどいのです(T_T)
子供を置き去りにして姿をくらまし、ようやく見つけ出して出会えたと思ったら、
一緒には暮らせないし会うのも嫌だと少年の存在自体を拒否します。
純粋に信じて慕うシリルの姿を見ているだけに、その父親の言い草にはぞっとしました。
まるで『
ある子供』の父親と同じです。(俳優さんも同じですけど^_^;)
父親に捨てられたショックにシリルは自傷行動をとり始めてしまいます。
そんなシリルをサマンサは必死に抱きしめました。
その後もシリルとサマンサは、すんなりと心を通じ合わせた訳ではありません。
シリルは心の傷と悪い大人のせいで、最悪な行動をとってしまうのです。
その行動を受け止めていくサマンサの強さには心を動かされました。
もともとはサマンサには全く係わり合いのない少年なのです。
でも彼女は、シリルにはもう自分しかいないと、シリルよりも先に分かっていました。
そして、彼女の静かな強さが彼の心を少しずつ静めていきました。
最後の試練にとったシリルの言葉と行動には泣けました(T_T)
彼がサマンサと出会えたことを本当に嬉しく感じたと同時に
親子の愛と絆についていろいろと考えてしまった1本です。
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ リュック・ダルデンヌ 出演:トマス・ドレ セシル・ドゥ・フランス ジェレミー・レニエ ファブリツィオ・ロンジョーネ
2011年 ベルギー/フランス/イタリア 原題:LE GAMIN AU VELO/THE KID WITH A BIKE
(20120331)
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公式サイトはこちらへ http://www.bitters.co.jp/jitensha/