南大東島で暮らす一人の少女を中心に島民たちの生活や心情を描いた作品です。
予告編で島を離れる前に少女が島民の前で披露する歌を聴いて、観てみたいなと思っていました。
じっくりと描かれた厳しい現実と、美しさに見とれるような風景に、複雑な想いを感じるような作品でした。
三吉彩花ちゃんの存在感はただものでありませんでした~
沖縄の本島から360km離れた離島の南大東島には高校がありません。
中学を卒業して高校へと進学する子供は、みんな島を離れて沖縄へ旅立ちます。
中学3年生の優奈(三吉彩花)は遠距離恋愛中の同い年の彼と
同じ高校へ進みたいと未来への希望を抱いていました。
でも、文通でお互いの気持ちを伝え合っていた彼からの手紙が途絶えてしまいます。
同じ頃、彼が家の漁業を継いで高校へは進学しないと言う噂を人伝に聞いた優奈は
船で北大東島に住む彼へ会いに行くことにしました。
でもそれは、身体を壊した父を手伝って幼い弟や妹を育てていかなければならないという彼との
最後のデートになってしまいました(T_T)
それにしても、いろいろ切ないエピソードが込められている物語でした。
幼い恋の終わりだけでなく、主人公の優奈の家族も複雑です。
農業に従事する父(小林薫)はこの地から離れられませんけど、子供たちはどんどん巣立っていきます。
3人兄妹の末っ子である優奈はここ数年、父との二人暮らしでした。
特に妻(大竹しのぶ)は長女が高校へ行った時からずっと沖縄本島で暮らしていて、仕事も含めて
本島での生活から離れられなくなっています。
妻の暮らしぶりについて親戚からも厳しいことを言われてしまう父も辛い想いを抱えています。
そして、優奈はそんな父の想いも理解しています。
それだけに、優奈の家族みんなで暮らしたいと願う言葉が切実に伝わって来ました。
また、もうすぐ自分も島を離れなくてはならないという現実から逃れられないことに痛みを感じている彼女が
父を心から心配する姿に、こんないい子を遠くへやらなくてはならない父は辛いだろうな…と思いました。
そして、三線を手に歌う娘の晴れ姿を見つめる父母の姿に泣けてしまいました。
子供は親を選べないのだから俺たちが守ってやらなきゃという父の言葉に揺るがない強さを感じました。
こんなに優しい家族だったら、住む場所がバラバラになっても心はずっと繫がっていって欲しいなあと
しみじみと思った1本です。
監督:吉田康弘 出演:三吉彩花 大竹しのぶ 小林薫 早織 立石涼子
2012年 日本
(20130518)
→
公式サイトはこちらへ http://www.bitters.co.jp/shimauta/