温かなオレンジ色の印象が強く残りました~
一人の若い女性が自転車で颯爽と走っているところから始まる物語です。
自転車に乗っていたアンドレ・エスラン(クリスタ・テレ)がたどり着いたのは、人気の無い門です。
通りかかった少年に、夫人から絵のモデルを頼まれたと伝えると、少年は屋敷へと案内してくれましたが、
屋敷内のメイドたちに用件を言うと、嘘つき!と彼女に言い捨てて走って行ってしまいました。
実は夫人はアンドレをモデルにスカウトした後に間もなく亡くなっていたのです。
持病に苦しんで体調を崩していたルノワール(ミシェル・ブーケ)は妻を失った上に
戦争へ行った長男と次男がそれぞれ大怪我を負ったという知らせを受けて絵を描く気力を無くしていました。
そんな彼の前に現れた生気溢れるアンドレに、彼は妻の話は本当かと静かに尋ねます。
そして、彼女が本当だと答えると、とりあえず自由にポーズをとらせます。
でも、モデルの彼女を前に彼が描いていたのは、全く関係ない静物画でした。
その日の時間が終わって彼の絵を覗いたアンドレは、自分が描かれていないと怒り出します。
そんな怒りもどこ吹く風のルノワールは、家を仕切っているメイドにアンドレへ金を渡すように言いつけると
明日も来るように彼女に言い渡します。
そして、翌日から彼女を中心にした絵画製作が再び始まることになりました。
それにしても、本当に美しい映画ですね。
全体がキラキラと輝かしくて温かい雰囲気に彩れられていました。
どのシーンも絵画のワンシーンのように美しくて鮮やかな色が印象的です。
裸婦だけでなく、ちょっとした水遊びや台所の食材までもが絵のモデルになっているのも楽しかったです。
また、息子や家族たちに言葉少なかったルノワールの父親ぶりも興味深かったです。
父を認めつつも、あまりにも偉大な父のために未来への野心を持てなった次男ジャンの葛藤や
ジャンの人生に大きな影響を与えたアンドレとの出会いには心を惹かれました。
ジャン・ルノワール監督の映画は未見でしたけど、ちょっと観てみたくなりました(^^ゞ
病魔に襲われ、妻に先立たれ、息子が戦争に行っているという不安を抱えながらも、
その暗さを忘れるように絵に没頭していくルノワールの姿が心に残りました。
観終った時、今度、ルノワールの絵を観たら、彼に安らぎをもたらした美しい風景と
ミューズたちの献身的な姿が思い浮かぶだろうなあと感じた1本です。
監督:ジル・ブルドス 出演:ミシェル・ブーケ クリスタ・テレ ヴァンサン・ロティエ トマ・ドレ ロマーヌ・ボーランジェ ミシェル・グレイゼル
2012年 フランス 原題:RENOIR
(20131114)
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公式サイトはこちらへ http://renoir-movie.net/