宮崎監督の街を見る目がとても楽しかったです~
宮崎監督の出勤から始まる物語です。
緑の多い東京都下にあるスタジオジブリの朝は既に始まっています。
そんな中、自分の健康維持を科した宮崎監督は、11時に姿を見せ、夜の9時にペンを置きます。
昔は徹夜などいくらでもという生活でしたけど、70歳を超えた今はそれほど無理がききません。
長編アニメ映画の製作は何年もかかる長丁場です。その過酷さは終わりの見えない旅のようなものでした。
2012年のジブリは2013年夏の公開として『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』を抱えていました。
もともと2本同時上映でしたけど、まだ終わりははっきりと見えていません。
特に『かぐや姫~』の方は、もう無理かもしれないと思える進み具合です。
鈴木敏夫プロデューサーも厳しい表情をします。
それでも見えない中、最初のプレス発表では2本同時で行こうと決めます。
そして、2013年の公開に向かって動き始めました。
それにしても、これまで観たことの無いジブリが観られました。
アニメ製作ってやっぱり過酷な作業ですよね。
生み出すのも、書き上げるのも大変ですし、宣伝して広げていくのも大変です。
しかも、とても時間がかかります。才能に加えて体力と気力も限界まで使わなくてはなりません。
ちょうど撮影時期に『風立ちぬ』の製作中で、手作りで進めていくその様子が映し出されていました。
2年をかけて創り上げた絵コンテが1本の映画になることのすごさを実感させられました。
そして、ラストの言葉が最初と180度意味が変わったという逸話には驚かされました。
また、スタジオジブリと言ったら宮崎監督と高畑監督、そして鈴木プロデューサーの歴史でもありますよね。
このあたりは様々な番組で取り上げられているので何となく知っていましたけど、
今回は特に宮崎監督と高畑監督の心の繋がりが面白かったです。
宮崎監督は毎日、高畑監督のことを語ります。
でも、その日によって最高だったり最低だったりと言葉がくるくる変わっていくのです。
そんな姿にちょっと笑いながらも、そんなふうに思える人が近くにいることが羨ましいなあと思いました(^^ゞ
あと、映画の中でちょくちょく登場する猫の姿がユーモラスで可愛かったです。
自由に歩き回るその猫は、悠々自適な生活ぶりです。
屋上のテーブルの上で昼寝中にちょっかいを出されても悠然と背を向けるだけです。
そのどっしりとした雰囲気が切羽詰っている社内の空気をさらりと流していくようで楽しかったです。
そして、そんな子も宮崎監督がカリカリと描いている部屋には近付かないというのも面白かったです(^^ゞ
映画の中では『かぐや姫~』のことはほとんど出てこないのですけど、
それでもめちゃくちゃ凄い難産だったというのは分かりました。
何と言っても、最初の企画の段階から参加していたスタッフの人が
結婚して、二人の子供が誕生して、上の子が小学校へ入学するくらいの年月が過ぎているのです。
やっぱり夏はダメでしたけど、11月に公開できて本当に良かったとほっとしました(^^ゞ
今作のラスト近くで宮崎監督が引退を発表します。
その発表会場の控え室で、街の風景を見ながら語る宮崎監督の無邪気な空想と
その言葉と共に一瞬だけ流れる名場面の数々が本当に楽しかったです。
観終った時、こんな名場面集を見せられたら、もっと夢が続いて欲しいなあと願ってしまうでしょと
ちょっと思ってしまった1本です。
監督:砂田麻美 出演:宮崎駿 鈴木敏夫 高畑勲 スタジオジブリのみなさん
2013年 日本
(20131120)
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