観終わった時、背筋がぞっとしました(T_T)
ホームビデオで撮られるチェチェンの悲惨な状況から始まる物語です。
ロシア兵のビデオに映し出されたのは、銃を持った兵士の前に立たされた農民の家族です。
彼らのことを笑いながらスパイだろうとからかっていた若い兵士たちは、農夫を銃殺し、
夫を殺されたことを嘆き哀しむ妻にも銃弾を浴びせると、夫婦の10代の娘を連れ去りました。
その様子を二階から見つめていたのは、夫婦の9歳の息子ハジ(アブドゥル・カリム・ママツイエフ)と
乳飲み子の兄弟です。
あまりの惨劇に言葉が出なくなったハジは、幼子を両手で抱えてロシア兵から逃げるように家を出ます。
でも、寒い気温に乳飲み子が耐えられる訳はありません。
ハジは子供の面倒を見てくれそうな家の玄関の前に幼子を置くと、
その家の者が赤ちゃんを家の中に入れてくれたことを見届けて、先へ進みました(T_T)
一方、チェチェンから遠く離れた地方都市で、道端にいた学生コーリャ(マキシム・エメリヤノフ)が警察に捕まります。
罪状は大したことはなかったのですけど、警察は非情に悪い状況だと彼を追い詰めて入隊を勧めます。
コーリャは罰を逃れるためにと勧めに従い、そのまま兵士の訓練に連れて行かれました(-_-;)
それにしても… 本当に怖い作品でした。
物語は全てを失った少年ハジの視点、兵士にさせられたコーリャの視点、そしてチェチェンの現状を前に
何も出来ない無力さを感じているEU職員のキャロル(ベレニス・ベジョ)の視点から描かれます。
最初はどうしてこの3人なのだろうと思っていたのですけど、最後に収束した時には納得でした。
孤独な中で出会うハジとキャロルの物語は、辛い状況の中でも心温まる展開でほっとしました。
特に少年ハジを演じるアブドゥル・カリム・ママツイエフくんの演技には何度も泣かされました。
また、ベレニス・ベジョの上手さはもちろんのこと、現地職員役のアネット・ベニングも印象に残りました。
一方の兵士となったコーリャのパートはじわじわと来る怖さを覚えました。
普通の感覚を持つ19歳の子が訓練と基地生活で少しずつ心を壊していきます。
その静かな狂気の進行に、こういう兵士が作れるからこそのチェチェンだったのですかと考えさせられました。
監督さんが多くのリサーチの上に書き上げた物語は、とてもリアルに感じる作品となっていました。
観終ったあと、この映画はずっと記憶に残るだろうなと感じた1本です。
監督:ミシェル・アザナヴィシウス 出演:ベレニス・ベジョ アネット・ベニング アブドゥル・カリム・ママツイエフ マキシム・エメリヤノフ ズクラ・ドゥイシュビリ
2014年 フランス/グルジア 原題:THE SEARCH
(20150425)
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