ドリアン助川著の同名小説を河瀬直美監督が樹木希林主演で作り上げた人間ドラマです。
原作は未読でほとんどタイトルしか知らなかったので、どんな物語だろうと気になっていました。
静かな空気を通して、生きるということは何だろうなあと考えさせられるような物語が綴られていました。
樹木希林さんの演技にひたすら魅せられていました。
桜のきれいな春の風景から始まる物語です。
桜並木沿いにあるどら焼き屋では、千太郎(永瀬正敏)が仕方無さそうな顔をしながら働いていました。
彼はこのどら焼き屋の雇われ店長で従業員はいません。
あさ11時から夕方まで、彼一人でどら焼きを売り続けていました。
ある日、桜に誘われたように、一人の老女(樹木希林)が店を訪ねて来ました。
アルバイト募集の年齢不問というのは何歳でも大丈夫なのかと確認をしてくる彼女は
客ではなくアルバイト希望でした。
年齢を尋ねた店長から高齢を理由に断られると、彼女はこの店の餡は良くないと言い始めます。
そして、自分の作った餡を店長に手渡すと、そくさくと去って行きました。
それにしても、樹木希林さんの演じる徳江さんは桜の妖精のようですね。
小豆を丁寧に調理して美味しい餡を作り、無邪気に喜んで嬉しそうに働く姿に見ている方も嬉しさを感じます。
もちろん永瀬さん演じる店長さんも、徳江さんと働くことが楽しくなってきました。
でも、餡の美味しさに売上が順調に伸びて、未来も明るいという雰囲気だったのに、
突然に客足が止まってしまいます。
何十年も前に徳江さんが罹った病気のために、悪評が広がってしまったのです。
完全に治って病気が伝染することは無いのに、世間から敬遠されてしまうのです。
その明らかな行為にはびっくりしてしまいました。
そして、現代でもこういう風潮が残っているのかと哀しくなってしまいました(T_T)
でも、徳江さんの存在は、将来の道が見えない店長さんや中学生・ワカナ(内田伽羅)に
強い想いを残してくれました。
観終った時、徳江さんの想いは彼らの未来をきっと照らし続けてくれると感じた1本です。
監督:河瀬直美 出演:樹木希林 永瀬正敏 内田伽羅 市原悦子 水野美紀 浅田美代子
2015年 日本/フランス/ドイツ
(20150612)
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