さいはてにて ～やさしい香りと待ちながら～

石川県能登半島で珈琲店を営み始めた一人の女性とシングルマザーの家族との交流を描いたドラマです。
永作博美さんが主演だったので気になっていたのですけど、DVD鑑賞になってしまいました。
予想以上に美しい風景と優しい物語に穏やかな余韻を感じるような作品でした。

一枚の絵のような美しい夜の海を観た時、スクリーンで観たかったなあと思ってしまいました。

父の死の知らせから始まる物語です。
ある日突然、吉田岬（永作博美）のもとに弁護士（イッセー尾形）が訪ねて来ました。
30年以上前に別れたきりの父親の死を伝えに来たのです。
実際には行方不明ということでしたけど、7年以上が経過して死亡と同様になったということでした。

父には借金がありました。弁護士は言いにくそうでしたけど、岬は借金を払いますとはっきり言います。
その言葉に安堵した弁護士は岬に、実は価値は全く無いが能登に船小屋が残されていると伝えます。
そこは彼女が4歳の頃に最後に父親と会った記憶にある、海沿いの小さな小屋でした。

船小屋を訪れた岬は、とりあえず今夜寝るところが欲しいと想い、隣家の民宿を訪ねます。
でも、その家で暮らしているシングルマザーの山崎絵里子（佐々木希）に民生委員と間違われて
追い払われてしまいます。
でも、翌日から岬が業者を手配して船小屋を修繕し始めると、絵里子は複雑な表情で窓から観ていました。

それにしても、本当に穏やかで優しい気持ちになれる作品でした。

実は、岬も絵里子も深刻な状況を抱えています。
岬は行方不明の父を待ち続けるために、都会からひとり能登へとやって来ます。
彼女は両親の離婚で父と離れてしまったことを心の中でずっと悔いていました。
そして、借金を抱えても、父と再会して離れていた日々を取り戻したいと願っていました。

絵里子は若くしてシングルマザーとなったキャバ嬢で、彼女にはこれしか働く手段がありません。
しかも、頼りにしていた祖母が病気で入院してしまったため、彼女が金沢へ出稼ぎに行く時は
小学生の姉弟の2人になってしまいます。
端から見ると無責任な母親のようにも見えますけど、彼女としては子供のために頑張っているのです。
でも、離れている時間が多い分、子供は母に言えないことが増え、
子供たちの生活はかなり厳しい状況になっていました。

そんな親子が珈琲店を営む岬と出会って変わっていきます。
お互いを想う気持ちがゆっくりと育っていく様子が、自然な優しい視線で映し出されていました。
先に親子が岬に救われるのですけど、実は岬も親子に救われていきます。
そんな展開には、本当にほっとした気持ちになりました。

永作博美さんをはじめとして、佐々木希さんや彼女の子供役たちもみんな良かったです。
観終った時、今ではなかなか感じることの出来ない、ゆったりとした雰囲気のこの作品が
台湾の監督さんに撮られたというのもちょっと分かるかもと感じた1本です。



監督：チアン・ショウチョン　出演：永作博美　佐々木希　桜田ひより　保田盛凱清　臼田あさ美　村上淳　イッセー尾形　永瀬正敏　浅田美代子
2014年　日本
（20151012）

→公式サイトはこちらへ　http://www.saihatenite.com/