子供を誘拐することの残酷さを実感させられました。
突然に子供が誘拐されてしまうところから始まる物語です。
商店街でネットカフェを細々と開いているティエン(ホアン・ボー)には
別れた妻ジュアン(ハオ・レイ)との間に3歳の息子ポンポンがいました。
経済的な理由で離婚した二人でしたけど、二人とも息子には深い愛情を抱いていました。
そんなポンポンが突然に行方不明になってしまいました。
姿が見当たらないと気付いたティエンは近所を探し始めますが見つかりません。
ジュアンが連れ去ったのではないかと彼女を訪ねてもそんな気配はありません。
もしかして誘拐されたのではと慌てて仲間たちと駅へ探しに行くと、一足違いで汽車は出発した後でした。
それからのティエンは街頭のビラ配りやネットでの告知など、賞金をかけて必死に情報を集めようとします。
でも、連絡してくるのは賞金を騙し取ろうとする悪人ばかりで、
情報を追っては空振りばかりの日々に、次第に資金も気力も失っていきます。
同じ境遇の夫婦たちが集まっているコミュニティに参加することで、
ようやく気持ちを保っているような状況でした(T_T)
それにしても、子供を盗まれてしまうなんて、これほど哀しいことはないのですね。
行方不明から3年が過ぎたある日、有力な情報を追って都会から離れた小さな農村を訪ねると、
そこには二人が夢にまで見た愛する我が子ポンポンがいました。
でも、6歳になったポンポンには3歳までの記憶が無く、育ての母ホンチン(ビッキー・チャオ)を
本当の母親と慕っていました。
せっかく連れ戻しても、本当の両親を人攫いだと思って母親に会いたいと泣く我が子に
ティエンたちはどうすることも出来ません。
そっと子供が心を開いてくれることを待つしかないのです。
監督さんがインタビューした時、実際の事件の親たちも、養子を迎えたようだったと言っていたそうです。
実の親たちも辛いですけど、子供たちにとっても辛いことです。
愛する大切な親から2度も引き裂かれてしまうのです。
また、今回の物語では、育てていたホンチンは誘拐された子供だとは全く知らずに
夫が連れ帰って来た時から深い愛情と共に子供を育てていました。
幸運にも子供が実の親元に帰っても、誰もが辛い想いを抱えてしまうという現実が観ていて悲しくなりました。
また、どんなに探しても子供が見つからない親の絶望にくれる姿も痛々しくて辛かったです。
この作品は監督さんが実際の事件のことを伝えたテレビ番組を観て、これは創らなくてはと
強い想いで望んだ作品だそうです。
それだけに、とても丁寧に主人公たちの心の行方を追っていて、そのリアルさに引き込まれました。
また、監督の想いに集まったビッキー・チャオやホアン・ボーなどの名優たちの熱演も見応えがありました。
毎年20万人の子どもが誘拐されていると言われている現実がここに描かれていました。
観終った時、子供の売買が商売になってしまうなんて幸せな社会じゃ無いなあとしみじみと思ってしまった1本です。
監督:ピーター・チャン 出演:ビッキー・チャオ ホアン・ボー トン・ダーウェイ ハオ・レイ チャン・イー
2014年 中国/香港 原題:親愛的/Dearest
(20151123)
→
公式サイトはこちらへ http://www.bitters.co.jp/saiainoko/→
第16回東京フィルメックスの公式ホームページはこちらへ http://filmex.net/2015/追伸
この映画は第16回東京フィルメックスで観ました。公開は2016年1月の予定です。